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21世紀医療フォーラム 良い医者、良い医療を創るプロジェクト
トップページ医療を変える患者も医師も大切にされていない日本の医療。どのように改革すべきか

『連載 医療現場に聞く』第1回

患者も医師も大切にされていない日本の医療。どのように改革すべきか

北関東循環器病院院長 南 和友氏インタビュー(1)

2010.04.06 聞き手・構成:21世紀医療フォーラム取材班 狩生聖子 文責:日経BPnet編集プロデューサー 阪田英也

北関東循環器病院院長
南 和友 氏

心臓血管外科医としてドイツで30年以上、数多くの心臓手術、心臓移植を手がけてきた南和友医師。帰国後、日本の医療に危機感を持ち、現場からの医療改革を訴え続けている。日本の医療のどこが問題なのか?どう変えていくべきなのか?第一回目は「かかりつけ医制度」の問題を中心に聞いた。
(聞き手・構成:21世紀医療フォーラム取材班 狩生聖子 文責:日経BPnet編集プロデューサー 阪田英也)

早急に、「かかりつけ専門医制度」のカリキュラム策定を


――南先生の著書「こんな医療でいいですか」には、「患者も医師も大切にされていない日本の医療……」と記されています。具体的にはどのようなことでしょうか。

南 良い医療とは、患者が医師に対して厚い信頼を持ち、医師もそれに応えようと最大限の力を尽くせる医療だと思います。そうした医師の行為に、患者は非常に満足します。私はドイツで臨床医として務め、このことを実感してきました。当たり前のことのようですが、日本ではこれが徹底されていません。

象徴的なのが大病院への患者の集中でしょう。患者は、「いい医療を受けたいから」と、軽い症状でも有名な病院を受診する。しかし、診療する医師は、たくさんの患者さんに追われて十分な対応ができません。その結果、患者さんは不満を抱えた状態になります。最近は医療不信から、患者さんがちょっとしたことでも医師に不満を抱き、トラブルにもなりがちです。

勤務医の給与は安く、ただでさえ、過重労働であるのに、こんな環境ですから医師のモチベーションは下がる一方です。さんざんマスコミで報道されていることかもしれませんが、実態はずっと悲惨で、みんな相当に疲弊しています。「患者より先に医師が死んでしまうのではないか」ともいえる状況です。こうした問題は医療ミスとも深くかかわってくるのです。

――今は開業医と大きな病院の役割分担が明確になり、患者も理解はあると思います。大きな病院は紹介状がない場合、特定療養費をとられるようにもなっています。それでも成果はあがっていないのでしょうか。

南 では、あなたに聞きますが、あなたには「かかりつけ医(家庭医)」はいますか?

――いや……、いませんね。診察カードは山ほど持っていますが、懇意にしているところはありません。

南 多くの人がそうなんです。ドイツでは「かかりつけ医療制度」が徹底していて、自分の決めた「かかりつけ医」に健康保険証を預けなければなりません。救急の場合以外はどんな病気でもまずは「かかりつけ医」に行かなくてはならないのです。大病院に行くのはかかりつけ医が紹介した、本当にそこでの治療が必要な人たちだけです。

「かかりつけ医」は広くさまざまな科の知識があるジェネラリストですが、自身では診断がつけられないものもあります。このような場合、例えば婦人科の病気の疑いがあれば身近で信頼できる「クリニックの婦人科」に患者を紹介します。紹介されたクリニックは患者を診断した上で、再度、「かかりつけ医」に戻します。「かかりつけ医」はその結果をふまえて、さらに他の医師に紹介したり、大病院に紹介したりします。つまり、患者は「かかりつけ医」を起点に動くのです。

患者が自分のところに必ず戻ってくるのですから、責任も大きい。徹底してその患者のためによい医療を考えなければなりません。また、患者が戻ってくるということはさまざまな科のデータがみられるわけで、患者さんの状態を詳しく把握できると同時に、医師の知識向上にもつながります。

プロフィール

南 和友(みなみ かずとも)氏

1946年大阪和泉市生まれ。74年京都府立医科大学卒業。
76年ドイツ交換留学生としてデュッセルドルフ大学胸部・血管・心臓外科に留学。77年から同大学病院で助手、講師を歴任。84年よりバード・ユーン・ハウゼン心臓病センター設立にあたり、主任心臓外科医をつとめる。89年よりボッフム大学臨床教授を兼任。これまでに同センターで1300例におよぶ心臓、肺移植を行う。04年日本人の心臓外科医として初のドイツ永代教授(ボッフム大学)に任命。05年より日本大学医学部心臓血管外科教授、2010年4月より現職。

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