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21世紀医療フォーラム 良い医者、良い医療を創るプロジェクト
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医療や教育、行政が密接に連携した 人工内耳装用児の療育への取り組みを

第2回(連載2回)

2014.08.28 構成:AGING SUMMIT 取材班 但本結子
文責:21世紀医療フォーラム事務局長 阪田英也
静岡県立総合病院副院長
高木明(たかぎ あきら)氏
1952年生まれ。
1978年京都大学医学部医学科卒業。1979年兵庫県立尼崎病院耳鼻咽喉科医員を経て、1984年11月、京都大学医学部附属病院耳鼻咽喉科助手。1985年8月~1988年1月、米国ピッツバ-グ大学耳鼻咽喉科研究員。1990年京都大学医学部講師。1992年静岡県立総合病院耳鼻咽喉科医長。2003年同病院診療部長。同年10月京都大学医学部臨床教授。2009年より現職。
専門は聴力改善手術、神経耳科学、人工内耳、頭頸部外科、側頭骨病理及び解剖
●資格・公職 日本耳鼻咽喉科学会専門医 日本耳科学会代議員 日本耳鼻咽喉科学会代議員 日本気管食道科学会認定気管食道科専門医 日本耳鼻咽喉科学会静岡県地方部会福祉医療委員会理事(乳幼児医療担当)
●受賞 2013年第41回医療功労賞(都道府県)受賞

人工内耳の適応は成人から小児へと拡大し、世界的に見ても多くの国で約半数が小児例で占められている。日本でも日本耳鼻咽喉科学会が適応基準について提言し、2006年に生後18カ月が認められ、2014年2月には生後12カ月に見直しがなされた。その後、年々増加しつつあるものの、欧米やアジア諸国に比べてその数はまだまだ少ない。増えない理由は、患者家族だけでなく、医療従事者や教育関係者の間でも人工内耳への理解が充分ではないことが挙げられる。

小児の人工内耳手術は2~3歳までに行わなければ、スムーズな音声言語の発達が困難となるケースがある。また、たとえ人工内耳をつけたとしても、現在の日本では療育の場の選択肢が限られていることも、大きな課題となっている。

2回連載の2回目は、人工内耳をつけていても大事な学習時期に手話が先に入ることで、「せっかくの聴覚活用がおろそかになり、話し方が不自然となることもある」と、視覚情報を中心とした難聴教育に警鐘を鳴らす静岡県立総合病院副院長の高木明氏に、人工内耳装用後の療育のあり方や課題などについて、お話を伺った。
(構成:21世紀医療フォーラム取材班 但本結子 文責:日経BP社21世紀医療フォーラム事務局長 阪田英也)

視覚情報中心の教育では
音声言語獲得に遅れが

日本では受け入れが十分でないと言われましたが、早期発見は難しいのでしょうか。

高木 以前は、難聴の診断は2歳頃になることが稀ではなかったのですが、10年ほど前から新生児聴覚スクリーニングが盛んになり、現在では生後1週間で診断がつくようになりました。実は、このスクリーニングと人工内耳は連動しています。早く見つかるようになったから、早く人工内耳をつけることができ、音声言語が発達する時期に間に合う。一方で、早く見つけても聾学校での療育が長引いて、人工内耳への移行が遅れるケースが少なからず存在します。

その場合、どのような問題がありますか。

高木 聾学校で行われる教育は視覚情報が中心となります。人間はもともと視覚情報が優位な脳の作りとなっているため、人工内耳をつけた後も引き続き視覚を頼りとしていると、せっかくの聴覚の活用が伸ばされず、聞き取りの学習が弱くなっていきます。そのため人工内耳をつけていても、十分に聞き取りが伸びなかったり、手の動きに合わせて話すことに慣れ、話し方が不自然となることがあります。

手話で会話をする場合、実際に言葉はどのように理解しているのでしょうか。

高木 手話には「日本語対応手話」と「日本手話」の2つがあります。NHKや首相官邸等で見られるのが日本語対応手話で、私たちが話していることばの順番で手話をしています。一方、日本手話は手だけでなく、眉毛の動きや顔の表情など、ちょっとした動きも入って、日本語の語順とは関連せず、助詞もありません。この場合、文章を構成しないため、文字の音は出せても意味とつながらないことがあります。要するにイメージの世界に近いもので、私たちが思う言語とは別物です。

では、本は読めますか。

高木 手話を獲得後、特別に日本語の訓練をした聾の人は本を読めますが、日本手話だけで教育された人は難しいかと思います。手話を尊重する人たちは、手話を学習した後で日本語を勉強すれば読めるようになる、つまり、手話と日本語のバイリンガルが可能だと主張しています。

それでも高度な文を手話で表現することは難しいのではないでしょうか。

高木 日常的な生活語レベルのやり取りは手話で十分できるでしょうが、細かいニュアンス、論理構成などは恐らく難しくなると思います。ちょうど私たちが英語を学ぶように日本語を学ぶわけですから。大事な学習時期に手話が先に入ってしまうと、後から日本語を学ぶといっても、どうしても日本語は不十分になると思います。

聾学校ではどのような教育がされるのですか。

高木 聾で生まれた子どもたちの療育の選択肢として、まず聾学校がありますが、その内容は学校によってさまざまです。日本語を大切にする学校がある一方で、中には日本手話を大切にする学校もあります。子どもたちは学校で教わる手話に、さらに友達同士間の自然発生的な手話を交えて複雑な会話を成立させていきます。母親は一生懸命勉強して日本語対応手話までは使えるようになりますが、子どもが使う日本手話はなかなか使えません。だから、母子の細かなコミュニケーションが難しくなることもあります。

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