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21世紀医療フォーラム 良い医者、良い医療を創るプロジェクト
トップページ医療を変える言語の獲得は脳の発達と共に始まる 乳幼児への早期人工内耳手術を

言語の獲得は脳の発達と共に始まる 乳幼児への早期人工内耳手術を

第1回(連載2回)

2014.08.21 構成:AGING SUMMIT 取材班 但本結子
文責:21世紀医療フォーラム事務局長 阪田英也
静岡県立総合病院副院長
高木明(たかぎ あきら)氏
1952年生まれ。
1978年京都大学医学部医学科卒業。1979年兵庫県立尼崎病院耳鼻咽喉科医員を経て、1984年11月、京都大学医学部附属病院耳鼻咽喉科助手。1985年8月~1988年1月、米国ピッツバ-グ大学耳鼻咽喉科研究員。1990年京都大学医学部講師。1992年静岡県立総合病院耳鼻咽喉科医長。2003年同病院診療部長。同年10月京都大学医学部臨床教授。2009年より現職。
専門は聴力改善手術、神経耳科学、人工内耳、頭頸部外科、側頭骨病理及び解剖
●資格・公職 日本耳鼻咽喉科学会専門医 日本耳科学会代議員 日本耳鼻咽喉科学会代議員 日本気管食道科学会認定気管食道科専門医 日本耳鼻咽喉科学会静岡県地方部会福祉医療委員会理事(乳幼児医療担当)
●受賞 2013年第41回医療功労賞(都道府県)受賞

人工内耳の適応は成人から小児へと拡大し、世界的に見ても多くの国で約半数が小児例で占められている。日本でも日本耳鼻咽喉科学会が適応基準について提言し、2006年に生後18カ月が認められ、2014年2月には生後12カ月に見直しがなされた。その後、年々増加しつつあるものの、欧米やアジア諸国に比べてその数はまだまだ少ない。増えない理由は、患者家族だけでなく、医療従事者や教育関係者の間でも人工内耳への理解が充分ではないことが挙げられる。

小児の人工内耳手術は2~3歳までに行わなければ、スムーズな音声言語の発達が困難となるケースがある。また、たとえ人工内耳をつけたとしても、現在の日本では療育の場の選択肢が限られていることも、大きな課題となっている。

2回連載の1回目は、「脳が軟らかく、言語野が新たに発達する乳幼児期に、人工内耳の手術をしなければ、音声言語は伸ばせない」と強調する静岡県立総合病院副院長の高木明氏に、耳の仕組みや役割、早期に人工内耳手術を行う理由などについて、お話を伺った。
(構成:21世紀医療フォーラム取材班 但本結子 文責:日経BP社21世紀医療フォーラム事務局長 阪田英也)

「ことば」を聴くのは脳

まず、人工内耳についてお話を伺う前に、耳の仕組みや役割について、教えてください。

高木 図1は耳の模式図ですが、まず、鼓膜があり、耳小骨があって、その奥にある内耳で物理的な振動を電気に変えます。内耳の手前にある中耳は物理的な振動をそのまま増幅して伝えるだけですが、内耳で初めて振動が電気に変わり、それが神経へと伝わって脳に届きます。高度の感音難聴は電気に変える内耳に障害があるため、いくら補聴器をしても聞こえません。つまり簡単に言えば、振動の電気変換器が壊れている状態です。

図1

高木 これについて、図2の蝸牛の切片を使って、もう少し説明しましょう。コルチ器は振動の電気変換器です。高度難聴の人はこのコルチ器がないため、いくら補聴器で大きな振動を与えても神経に電気が流れないため聞こえません。難聴といえば、補聴器で音を強くすれば聞こえるはずと誤解されがちですが、実は内耳の変換器の故障のため、音を大きくしても聞こえるとは限らないのです。

図2

高木 中耳は物理的ですが、内耳は電気的、化学的です。脳幹は電気信号の前処理をし、入ってきた刺激を統合判断するのが脳です。ですから最終的に脳も非常に大切です。

つまり、内耳で電気信号になった音声は脳で電気信号として処理され、それで初めてことばとして理解すると考えていいのでしょうか。

高木 そうです。いくら音を感じても、例えばアラビア語を知らない人が、アラビア語を聞いたとしてもただの音で言語には聞こえないでしょう。それはアラビア語の辞書がないからです。

図3
医療を変える