• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版
21世紀医療フォーラム 良い医者、良い医療を創るプロジェクト
トップページ医療を変える「ASIAN AGING SUMMIT 2012」開催

「ASIAN AGING SUMMIT 2012」開催

第39回

2014.06.27 構成:21世紀医療フォーラム取材班 内藤悦子
文責:21世紀医療フォーラム事務局長 阪田英也

11月26日(月)、27日(火)、28日(水)の3日間にわたり、超高齢社会における"この国のあり方"を考え、産業振興を実現することを目的に「ASIAN AGING SUMMIT 2012」が開催された。

開催報告の第39回は、11月27日に行われたワークショップⅡのパネルディスカッション「高齢者市場の確立に向けて」をリポートする。

このパネルディスカッションは、樋口美雄氏(慶應義塾大学商学部教授)を座長に、太田聰一氏(慶應義塾大学経済学部教授)、加藤景司氏(加藤製作所代表取締役社長)、新川政信氏(かい援隊本部代表取締役会長)の4名で行われた。

慶應義塾大学商学部教授 樋口美雄 氏

慶應義塾大学商学部教授 樋口美雄 氏

加藤製作所代表取締役社長 加藤景司 氏

加藤製作所代表取締役社長 加藤景司 氏


企業と労働者の双方が60歳以上を
有意義に活用していく努力をすべき

樋口 最初に、どうすれば高齢者が元気よく、しかもいきいきと働くことができるのか。そうした社会を作るために何がポイントになると考えられるか、太田氏に意見をいただきたい。

太田 企業側のやるべきことと、労働者自身が考えて実践しなければいけないことの2つがある。まず企業側は、高齢者を重要な戦力として再認識することだ。従来の高齢者は引退が間近だと考えられ、教育訓練の必要はないという位置付けだった。しかしそれでは、高齢者の能力を活用できない。今後、生涯現役で働く人が増えていく中で、特に能力開発は企業内で活発に進めていくべきだ。

また、企業側は高齢者のモチベーションの確保に留意していく必要がある。現状では、定年退職をした後に再雇用で対応するケースが多い。その場合、短期雇用で賃金が一定水準で押さえられ、モチベーションの低下につながることがある。モラルアップの観点からも、昇給やボーナス、あるいは長年勤続をした人には表彰して報いるなど、非正規雇用や嘱託の人たちを含め、たとえ少額でもやっていくことが大切だ。

一方、雇用される側も、若いうちから自分が高齢になったときのことを考えていかなければならない。特に重要になりそうなのが、役職を外れたときに実力が発揮できるかどうか。現場のスタッフに戻ったときに、現場力や専門性をきちんと蓄えていないと対応できない。自分がどのような専門性を身につけて60歳からの人生を生きていくか、労働者自身も考えていく。企業側と労働者側の双方が、60歳以上を有意義に活用していく努力をすることが重要になる。

樋口 私も先日60歳になったが、自分では高齢者だという認識はなかった。私より年配の方たちや同世代の人たちと「高齢者とは誰か」ということを話すと、「自分は入っていない」「自分の年齢よりプラス5歳」というのが多くの人の高齢者の定義のようだ。実は1カ月前に、年金についての連絡をもらい、「自分も年金がもらえる年になったのだ」と思った途端に、何となく「そろそろ引退を考えろということか」という気分になり、モチベーションが下がったことがある。

やはりモチベーションを高める、あるいは維持することは非常に重要であり、これは仕事に限らず、生きて行く上では不可欠なことだろうと思う。高齢者のやりがいを維持できる社会や仕組みをどう作っていくか。少子高齢化とは無縁の時代に作られた仕組みが、現代では機能しない面があるのではないか。社会保障制度はもちろん、議題となっている働き方、働かせ方についても、さまざまな形で出直しを考えるべきではないかと改めて認識した。

全世代の能力を伸ばす機会を設ける
コミュニケーションも不可欠

続いて、加藤氏にお聞きしたい。加藤製作所では、2001年から高齢者に限定した人材採用を開始している。この活動が、2002年の全国高齢者雇用開発コンテス』で『厚生労働大臣賞最優秀賞』を受けられた。私もその審査員の1人だったので、講演内容は非常に喜ばしかった。こういった賞を選定するときに、最も気になるのが、その後も続けていけるのかどうかだ。心意気は素晴らしくても、時には持続できないこともある。加藤製作所では10年たった今も成長し続けており、勇気づけられた。ここに至るまでには多くの苦労や、それらに伴う工夫があったのではないか。

加藤 そもそも、平均寿命が男性で63歳、女性で67歳というのは昔のことだ。65歳からが高齢者と決められたのは半世紀以上も前であり、現代の60歳代は本当に若く、今となっては現実と乖離している。せめて75歳、あるいは80歳以上と、再定義すべきではと思っている。

高齢者限定の雇用を始めるのにあたり、最初はやはり、受け入れる側である若い正社員に苦労があったかと思う。実は、高齢者側の経験者は皆無だった。魚屋から証券マンまで、さまざまな職業の人たちがほとんどやったことのない仕事に取り組んでいただく上で、そのマネジメントは大変だったはずだ。ただ、そのあたりの苦労はお互いにあった。そこで心がけたのは、コミュニケーションをよく取ること。私と高齢者、私と正社員、あるいは、高齢者と若年層とのコミュニケーションの場を作る。ときとして“飲みニケーション”も大事だと思う。太田氏も言われたように、モチベーションを確保するために、高齢者の能力を伸ばす機会を設ける。正社員とは別扱いではなく、若い人たちと同じように能力開発の場があり、生涯現役で学べることがたくさんあると認識していただく。

弊社には、技術の伝承の場として「かじや学校」という社員教育の場がある。ここでは逆に、高齢者が先生となり、匠の技術を若い人たちに継承することもやっている。

樋口 60歳まで務めてきた仕事の中身が、全く新しいものに変わっていく。そういったことに対する柔軟性も働く者には求められる。社会の変化は激しく、また産業が高度化してくれば、また別の技術が求められるため、若いときに身に付けた技能がそのまま生涯に渡って使えるとは限らなくなってきている。そうしたときに、やはり未知のものを積極的に吸収していくことが、生きがいにもなっていきそうだ。若い気持ち、負けない気持ち、笑顔で働き続けること、このようなことが大切になってくる。また会社のほうも、そういった人をいかに育てていくかが重要になってくる。

(構成:AGING SUMMIT取材班 内藤悦子 
 文責:日経BP社21世紀医療フォーラム事務局長 阪田英也)

医療を変える