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21世紀医療フォーラム 良い医者、良い医療を創るプロジェクト
トップページ医療を変える歩きやすさを測る「ウォーカビリティ」を用い 高齢社会の町づくりの指標をめざす

歩きやすさを測る「ウォーカビリティ」を用い 高齢社会の町づくりの指標をめざす

2014.07.03 取材・構成:21世紀医療フォーラム取材班 赤堀たか子
文責:日経BP社 21世紀医療フォーラム事務局長 阪田英也

健康を維持・向上させるためには、歩くことが重要になるが、町の中には段差や交通量の多い道など、高齢者が歩きにくい場所も多く、歩くことがかえって危険な場合も少なくない。日常生活の中で高齢者が安心して歩けるために、町の評価や設計は、どうあるべきか。
町の“歩きやすさ”を示すウォーカビリティの研究に取り組んでいる中央大学理工学部人間総合理工学科教授の山田育穂氏にお話を伺った。

(構成:AGING SUMMIT取材班 赤堀たか子 
 文責:日経BP社21世紀医療フォーラム事務局長 阪田英也)

中央大学理工学部 人間総合理工学科教授 山田育穂 氏
中央大学理工学部 人間総合理工学科教授
山田育穂 氏

1997年、東京大学工学部都市工学科卒業。
1999年、同大学大学院工学系研究科修士課程修了。
2004年、米国ニューヨーク州立大学バッファロー校地理学科博士課程修了(Ph.D.)。
米国インディアナ大学パデュー大学インディアナポリス校助教授、ユタ大学助教授、東京大学空間情報科学研究センター准教授等を経て、2013年より現職

肥満対策から始まったウォーカビリティ

山田先生は、都市環境と健康についての研究をされていらっしゃいますが、その内容について具体的に教えてください。

山田 私は空間情報を用いてウォーカビリティについて研究しています。このウォーカビリティとは、ウォーク(歩く)とアビリティ(できること)を合わせた言葉で、“歩けること”、言い換えれば、“歩きやすさ”を意味します。

都市のウォーカビリティとは、都市環境が歩くのに便利で、かつ安全で快適であるかを示すものです。ウォーカビリティの高い都市構造を提供することにより、人々の車依存度を下げ、日常生活の中の歩行を増やし、健康を増進することにつながると考えられています。

ウォーカビリティを測る視点は、「人口密度(Population Density)」「歩行者に優しいデザイン (Pedestrian-friendly Design)」「土地利用の多様性(Land use Diversity)」の3点で、これらは「ウォーカビリティの3D」と呼ばれています。

ウォーカビリティを評価する上で使われるのが、デジタル化された地図や場所、位置などに関わるデジタル情報である「空間情報」です。空間情報は戦後、米国やカナダをはじめとする欧米で、国防、土地・資源管理、都市・交通計画の分野で活用され発展してきましたが、近年はウォーカビリティのように、日常生活に関わる分野でも活用されるようになってきています。

ウォーカビリティの研究には、どのようなものがあるのでしょうか。

山田 ウォーカビリティの研究が進んでいるのは欧米で、特に米国では、成人の約7割が肥満に該当するといわれるほど肥満問題が深刻なことから、肥満対策の観点からウォーカビリティの研究がなされています。

例えば、ユタ州のソルトレイクシティで私のグループが行った研究では、自治体等が整備している土地利用データや道路データを地理情報システム(GIS)と呼ばれる空間情報処理に特化したソフトウェアで解析し、道路の接続のよさや土地利用の混合度合い、商業施設までの距離など、17のウォーカビリティの指標を算出し、これらと住民約5000人の肥満度(BMI)とを比較しました。その結果、「土地利用の多様性」「公共交通への近接性」「緑の充実度」等の指標が高い地域の住民ほど肥満の度合いが低いということがわかりました。

一方、日本では、総務省が5年ごとに実施している「住宅・土地統計調査」を用いて関東地方の一都六県のウォーカビリティのばらつきを調べました。3Dの指標として次の3つを設定しました。

・人口密度:住宅数
・歩行者に優しいデザイン:最寄りの幅員6m以上の道路までの距離
・土地利用の多様性:住宅の種類、建築の時期、最寄りの主だった施設までの距離

調査の結果、都市部とそれ以外の地域ではウォーカビリティに大きな差があることがわかりました。例えば、最寄りの医療機関やデイサービスまでの距離が500m未満の地域は、地方に行くほど少なく、高齢化の進展と共に、その影響が出てくるのではないかと危惧しています。

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