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21世紀医療フォーラム 良い医者、良い医療を創るプロジェクト
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「京都大学臨床研究中核病院構想シンポジウム」開催

第18回

2014.02.04 取材・構成:21世紀医療フォーラム取材班 豊原富栄
文責:日経BP社 21世紀医療フォーラム事務局長 阪田英也

去る2013年2月9日(土)、宝ケ池の国立京都国際会館において、「京都大学臨床研究中核病院構想シンポジウム」が開催された。臨床研究中核病院としては初の試みであり、この事業を広く市民、患者団体、関連病院、業界などに普及・啓発することを目的としている。

開催報告の18回目は、医療倫理トラックで行われた京都大学大学院医学研究科EBM研究センター特定准教授の笠原正登氏の講演をリポートする。
(取材・構成:21世紀医療フォーラム取材班 豊原富栄 文責:日経BP社21世紀医療フォーラム事務局長 阪田英也)

プログラムはこちら(PDF画像が開きます)

臨床研究の重要性

標準的な治療法を確立するための臨床研究
京都大学大学院医学研究科EBM研究センター特定准教授 笠原正登 氏
京都大学大学院医学研究科EBM研究センター特定准教授
笠原正登 氏

何らかの病気にかかったとき、病院に行って治療を受けるが、その治療が本当に有効なのか、それは安全なのかといった疑問の解決はどのようになされるのだろうか。一般には、その担当医師が信頼できるかどうかによって決まると考えられる。では、医師の側はどのように治療法を選ぶのか。

例えば糖尿病の治療において、ヘモグロビンA1Cという数値をコントロールすることがある。その際、医師によってコントロール度合の良し悪しがあり、結果に差が出ることがわかっている。また、心筋梗塞の患者への処方について国内外で質問したところ、「薬物療法」「薬物療法とカテーテル」「薬物療法とカテーテルとバイパス手術」といったようにさまざまな答えが出てくることも明らかになった。日本ではカテーテルを選ぶ医師が圧倒的に多い。これらのばらつきは、標準的な治療が明確に示されていないからだと言える。

先に述べたように、本当にその治療法が有効なのかを判断するには、標準的な治療法のもとで、どのくらい効果があるかを見て初めてわかるものだ。そのためには標準的な治療法を決める必要があり、それを判断するには科学的な根拠が必要になる。今までのように、医師それぞれの経験則に基づく考えや思い込みなどではなく、しっかりした臨床研究によって得られた情報を活用すべきだろう。EBM(evidence-based medicine)、つまり、根拠に基づく医療を行う必要がある。

臨床試験は総じて将来の患者を見つめて行われる。被験者に対して思い入れがあるとバイアスがかかり、ものの見方が変わってしまう恐れもある。臨床研究では1例1例、報告を受けて知見をためたり、調査によって断面的または横断的に今あるがままを観測したり、医師の介入を伴う実験で無対象・無作為・非無作為の集団に対する投薬などの実験を行う。これによって得られた情報をまとめることで、そうしたバイアスを防ぎEBMを行うことができる。

臨床研究と被験者の保護

その昔、臨床研究の被験者の多くは貧困層が担い、そこから得られた利益は資産階級が享受していた。その最たるものが人体実験であった。実験は強制的に行われるものがほとんどで、死亡したり、ひどい障害が残ることもしばしばあった。

他方、さまざまな新薬の開発に関わる臨床実験は、医療の発展とその利益を一般に還元することを目的としていることに変わりはない。しかし、過去の反省から、ヘルシンキ宣言に代表されるような倫理的な原則が非常に重んじられるようになった。今日ではプライバシーを守るという考え方も加わって、被験者はもちろん協力によって得られた情報は厳密に管理されている。

そうした中で調べ上げた医薬品であっても、重篤な副作用が出るものもあれば、特殊なケースの治療を目的として開発されたにもかかわらず適用の領域を拡大して有効性を認められる場合もある。それらの情報を把握するためにも、臨床研究は医薬品が世に出た後も続けられる必要がある。世界基準で安全性や科学性が担保された実験のもとで承認されたものでなければ、使用したり、治療法として使うわけにはいかない。

このように、ヒトの生命にかかわる研究において、質の高い臨床研究は不可欠だ。2013年4月から臨床研究の新しいセンターができるが、そこでは各分野からの協力によって、日本の臨床研究の中心を担うべく進めていきたいと考えている。

(取材・構成:21世紀医療フォーラム取材班 豊原富栄 
文責:日経BP社21世紀医療フォーラム事務局長 阪田英也)

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