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21世紀医療フォーラム 良い医者、良い医療を創るプロジェクト
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「京都大学臨床研究中核病院構想シンポジウム」開催

第17回

2014.01.28 取材・構成:21世紀医療フォーラム取材班 豊原富栄
文責:日経BP社 21世紀医療フォーラム事務局長 阪田英也

去る2013年2月9日(土)、宝ケ池の国立京都国際会館において、「京都大学臨床研究中核病院構想シンポジウム」が開催された。臨床研究中核病院としては初の試みであり、この事業を広く市民、患者団体、関連病院、業界などに普及・啓発することを目的としている。

開催報告の17回目は、医療倫理トラックで行われた京都大学医学研究科医療倫理学・遺伝医療学教授の小杉眞司氏の講演をリポートする。
(取材・構成:21世紀医療フォーラム取材班 豊原富栄
文責:日経BP社 21世紀医療フォーラム事務局長 阪田英也)

プログラムはこちら(PDF画像が開きます)

臨床研究における倫理審査について

京都大学医学研究科医療倫理学・遺伝医療学教授 小杉眞司 氏
京都大学医学研究科医療倫理学・遺伝医療学教授 小杉眞司 氏
臨床研究とはなにか

さまざまなバックグラウンドを持つ人が集まるこのような場で、専門家も一般の方も共に議論できる機会を大切にするためにも、日本におけるヒトを対象として医療研究にはどのようなものがあるかをまずは整理したい。

1つ目は「治験」。これは医薬品や医療機器を承認する目的で厚労省が行うもので、日本独特のものだ。2つ目は「臨床研究」で、治験とは違いモノを承認するわけではない。ここでは、今後期待される再生医療や細胞を用いた治療法、新しい手技のほか、承認されている薬を適用範囲外の治療目的で使用した場合に効果が得られるかどうかを調べる。つまり治療法の研究を中心に、予防法の発見や、診断方法を見出すことなどが目的とされる。

さらに、3つ目は「観察研究」だ。通常の診療の中で得られるデータや患者の血液中にある物質を調べることによって、新しい病態の解明や知見をためることを目的として行われる。これらヒトを対象とする研究の前段階には、ヒトの細胞や動物を使った基礎研究が行われる。

このように臨床研究とは領域が幅広いため、ここでは病気に対して何らかの介入や新しい治療法を目指す研究について発表する。

新しい医薬品が世に出るまでには、簡単に言うと次のようなステップがある。まず、化合物の非臨床実験が行われ、効果が見込めそうなものとそうでないものを分ける。次に、使えそうなものだけを臨床にかける。

例えば、抗がん剤が承認されるまでは、非承認の段階で実施する動物実験を皮切りに、第1層から第3層までの臨床実験が行われる。第1層の段階からヒトに投与し、現在行われている標準的な治療と新薬を利用した場合とを比較し、より効果がある場合は承認を与えることになる。こうした多くのステップを踏んで承認まで漕ぎ着けても、場合によっては経過観察の途中に承認を取り消されることもある。実際に医薬品として定着するまで、10~20年くらいの長い時間が必要になる。

一方、患者側は動物実験の段階など、未承認の段階行われる報道などを見聞きし、実際に自分の治療に使いたいと連絡をしてくることもある。だが、ヒトに使用するためには必ず臨床実験というステップが必要だ。ヒトに使用する以上、絶対に大丈夫か、最大限にヒトを守れるかという点をクリアにすることが必要不可欠だからだ。

倫理審査と臨床研究のあり方

診療なら目の前の患者を救うことが1番の目的となるが、臨床研究は将来の患者の治療が目的であり、医学の進歩のためにも不可欠なプロセスである。だが、もちろん、目の前の患者の保護と利益が尊重されるべきことは言うまでもない。数十年前には、人体実験に近いようなことが行われてきたことも事実だ。そうならないためにも臨床研究に参加してくれる被験者を守る意味で、研究に対する倫理審査は大変重要である。

では、我が国が抱える問題点は何か。日本は、基礎研究はトップクラスだが臨床研究については疑問も多い。例えば、海外で承認された医薬品であっても日本国内でなかなか承認されないといういわゆるドラッグラグの問題がある。一方で、海外に先駆けて承認された薬における薬害問題もある。加えて、日本発の新薬が少ないことから、医薬品や医療機器を海外から大量に購入しなければならず、莫大な医療費が海外に流出している状況も問題点である。これを打開するためにも、人的なスタッフをはじめ、患者をサポートするコーディネーターや倫理審査をする人員の確保が急務だ。

臨床研究において、科学的に妥当でないことは倫理的にも妥当ではない。この考えに沿って、臨床研究に関する説明文書や同意書がわかりやすいものか、予想外のできごとが起きた場合はすぐに対応できるか、インフォームドコンセントに基づいて臨床研究を実施し、その途中でも被験者が疑問や不安に感じることを相談できるような体制ができているのかといった点を患者の立場に立って考え、被験者を保護する体制を作ることは非常に重要である。

これらを実現するためにも、一般の人を巻き込んだ倫理審査の実施は重要であり、この議論を広く行うことは我が国の臨床研究を発展させる上での課題と考えている。

(取材・構成:21世紀医療フォーラム取材班 豊原富栄 
文責:日経BP社21世紀医療フォーラム事務局長 阪田英也)

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