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21世紀医療フォーラム 良い医者、良い医療を創るプロジェクト
トップページ医療を変える地域医療資源との「心をつなぐ連携」で
温かながん医療を促進

地域医療資源との「心をつなぐ連携」で
温かながん医療を促進

第2回(2回連載)

2013.12.10 聞き手:日経BP社 21世紀医療フォーラム事務局長 阪田英也
構成:同取材班 但本結子
足立秀治氏
兵庫県立がんセンター院長
足立秀治氏
1977年神戸大学医学部卒業。1982年神戸大学大学院修了。同年、神戸大学医学部助手。1986年同大学講師。1988年米国オハイオ州ケース・ウエスタン・リザーブ大学留学。1994年国立姫路病院放射線科医長。1997年神戸大学医学部助教授。2001年兵庫県立成人病センター放射線科部長。2003年同センター診療部長、神戸大学医学部臨床教授。2007年兵庫県立がんセンターに病院名称変更。2009年同センター副院長。2013年4月より現職
公職/2007年兵庫県がん診療連携協議会幹事長。2013年同協議会議長
主な研究領域/胸部放射線診断学、肺癌の画像診断、がんの地域連携、地域連携パスなど
○兵庫県立がんセンター

2007年に「都道府県がん診療連携拠点病院」の指定を受けた兵庫県立がんセンターは、がんの専門治療をはじめ、医療者の育成や臨床研究、情報発信を行い、兵庫県におけるがん医療の中枢的機関としての役割を担っている。また、県内の地域がん診療連携拠点病院や一般病院、診療所など地域医療機関とも連携し、県内のどこでも安心・安全で質の高いがん医療が受けられる体制を構築中である。

そのような中で、近年、がん治療がより専門化、高度化し、あらためて都道府県がん診療連携拠点病院の役割が重要度を増している。今年4月、同センター院長に就任した足立秀治氏に、都道府県がん診療連携拠点病院としての使命や課題、地域連携などについてお話を伺った。
(聞き手:日経BP社 21世紀医療フォーラム事務局長 阪田英也 構成:同取材班 但本結子)

点から線へ、線から面へ
治療と支援を拡げるチーム医療

がん治療の現状と傾向などについて、教えてください。

足立 近年、日本の医療事情は大きく変化しました。特にがん治療においては、ESDや外来ケモ(外来通院による化学療法)、分子標的治療、IMRT(強度変調放射線治療)など、従来に比べて身体に優しく、より治療効果の高い技術が増えています。また、臓器別のがん専門医、化学療法専門医、放射線専門医などによる集学的治療が行われるようになり、緩和医療や在宅医療への拡大を含めると、全ての医療が高度化、専門化しています。そうなると各分野の専門医や看護師、技師などによるチーム医療が不可欠であると同時に、単一施設での対応ではなく、地域での役割分担と連携が重要です。

また、患者の高齢化と共に、高齢者のがんも増加しています。年齢構成の異なる地域間での死亡状況が比較できる「年齢調整死亡率」によれば、この20年間で全がんの年齢調整死亡率は減少傾向にあります。がんの最大のリスク因子は老化であり、高齢者のがん治療においては合併症が増加しています。先に述べたように、ここでも、総合診療医や在宅医、訪問看護師など、多職種スタッフでの連携が不可欠です。

がん治療の変化、チーム医療への転換と課題は多いですね。

足立 はい。がんの予防や早期発見、早期治療はもちろんですが、重要なのは、これまでの「根治させる医療」から「見守る医療、付き合う医療」への転換です。患者1人ひとりの症状や意向に応じて複数ある治療法から選択できることで、生き方や死生観を含めて、かかりつけ医や在宅による医療はますます重要度を増していきます。

地域におけるチーム医療においては、繰り返しますが、鍵を握るのは「役割分担」と「連携」です。従来のように1人の医師や1つの病院を中心とした治療ではなく、訪問看護師やケアマネージャー、薬剤師などが連携しあうチーム医療によって、点から線へ、線から面へと治療や支援を拡げることが可能になります。

提供体制については、いかがでしょうか。

足立 今年9月5日に厚労省「がん診療提供体制のあり方に関する検討会」から発表されたばかりですが、これは拠点病院の整備や緩和ケアの方法などについて取りまとめたものです。

資料-1 新たながん診療提供体制について(報告書/厚生労働省)

国が進めている緩和ケアセンター構想では、今まで以上に早期からの緩和ケアやこれに対する意識の向上を求められています。当センターは都道府県拠点病院としての機能整備はできており、がんを告知されて落ち込んだり、つらかったりした際には、緩和ケアチームや心療内科や精神科医師(非常勤医師)との連携、精神疾患についても近隣の精神病院との連携でうまく対応できています。しかし、今頭を悩ませているのは、精神症状の緩和を担当する医師を1人以上常勤させるというものです。精神腫瘍科や心療内科医師が担当していますが、これらの医師の絶対数が少なく、常勤医師の配置はなかなか難しい問題です。

先ほど足立先生が言われた在宅での取り組みに、緩和ケアも含まれてきますね。

足立 緩和ケアについても、在宅での緩和ケア体制の構築が重要です。在宅で、患者・家族が苦痛のない療養を受けられるために、次のような体制づくりが急務であると考えています。

①拠点病院は緩和治療に必要な診療情報を地域医療者に提供する
②在宅療養中の患者・家族は、まず地域医療者(在宅医、かかりつけ医)に相談を行う
③地域医療者が実施中の緩和ケアについて困った時には、拠点病院に相談できる体制をとり技術支援を行う
④在宅にて緩和治療が困難な時には入院できる体制をとる

在宅連携でキーになるのは、地域に根ざした、かかりつけ医を中心とする医療です。在宅での療養体制はまだまだ十分とはいえませんが、がん患者が療養中であっても、自宅等の住み慣れた生活の場で自分らしい生活を続けるためには、地域における関係機関が連携して、継続的な在宅医療・介護の提供を行うことが不可欠です。

そのために必要な施策はどのようなことでしょうか。

足立 ここで必要な医療体制とは、がん拠点病院での病院完結型ではなく、地域の診療所・病院との役割分担と連携です。さらには訪問看護師やケアマネージャーなどのチームでの療養、患者・家族の視点に立った医療、介護の連携構築も欠かせません。患者・家族にも十分に理解してもらった上で、前述したように、点から線へ、線から面へ、そして面から立体への連携構築を進めることができます。

「顔の見える連携」とよくいわれますが、さらに一歩進んで「心をつなぐ連携」で、地域の医療関係者との連携を密にし、情報共有や意見交換などを推進していくことです。今後も、今まで以上に、地域のチームでの医療連携を基本として、心をつなぐ温かいがん医療を推進したいと思います。

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