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21世紀医療フォーラム 良い医者、良い医療を創るプロジェクト
トップページ医療を変える「根治させる医療」から「見守る医療、付き合う医療」へ
がん医療は地域連携が不可欠

「根治させる医療」から「見守る医療、付き合う医療」へ
がん医療は地域連携が不可欠

第1回(2回連載)

2013.12.03 聞き手:日経BP社 21世紀医療フォーラム事務局長 阪田英也
構成:同取材班 但本結子
足立秀治氏
兵庫県立がんセンター院長
足立秀治氏
1977年神戸大学医学部卒業。1982年神戸大学大学院修了。同年、神戸大学医学部助手。1986年同大学講師。1988年米国オハイオ州ケース・ウエスタン・リザーブ大学留学。1994年国立姫路病院放射線科医長。1997年神戸大学医学部助教授。2001年兵庫県立成人病センター放射線科部長。2003年同センター診療部長、神戸大学医学部臨床教授。2007年兵庫県立がんセンターに病院名称変更。2009年同センター副院長。2013年4月より現職
公職/2007年兵庫県がん診療連携協議会幹事長。2013年同協議会議長
主な研究領域/胸部放射線診断学、肺癌の画像診断、がんの地域連携、地域連携パスなど

2007年に「都道府県がん診療連携拠点病院」の指定を受けた兵庫県立がんセンターは、がんの専門治療をはじめ、医療者の育成や臨床研究、情報発信を行い、兵庫県におけるがん医療の中枢的機関としての役割を担っている。また、県内の地域がん診療連携拠点病院や一般病院、診療所など地域医療機関とも連携し、県内のどこでも安心・安全で質の高いがん医療が受けられる体制を構築中である。

そのような中で、近年、がん治療がより専門化、高度化し、あらためて都道府県がん診療連携拠点病院は、その役割が重要度を増している。今年4月、同センター院長に就任した足立秀治氏に、都道府県がん診療連携拠点病院としての使命や課題、地域連携などについてお話を伺った。
(聞き手:日経BP社 21世紀医療フォーラム事務局長 阪田英也 構成:同取材班 但本結子)

○兵庫県立がんセンター

2013年4月1日、足立先生は兵庫県立がんセンターの院長に就任されました。半年を経た現在のご心境について、お聞かせください。

足立 1962年に国立がんセンターが設立されましたが、同じ年に兵庫県でも当センターの前身である「兵庫県がんセンター」が神戸市内に設立されました。当センターは52年の長い歴史に加え、豊富な症例数と優秀な治療実績を持つ優れた病院であり、その病院長に指名されたことは身に余る光栄です。同時に、責務の重さを痛感し身の引き締まる思いです。

県立病院は自治体立病院として、民間医療機関では十分な対応が困難な高度専門・特殊医療の提供、保健医療行政との連携による政策医療の提供、医師等の教育・研修など、その役割をしっかりと果たすことが求められています。兵庫県の病院事業は地方公営企業法の全部適用を受けており、総合病院、専門病院など計14病院を運営しています。その中で、各病院の人事や予算について、病院長にそれほど権限が与えられていません。病院長に医療専門職の雇用などの権限を与えることは、医師や看護師の業務軽減だけではなく、チーム医療や病院経営の面からも重要なことだと考えています。また、県立病院には予算や整備計画などの制約があり、そうした厳しい面にも直面した半年でしたが、心新たに取り組んでいきたいと思っています。

ここであらためて兵庫県立がんセンターの地域における役割について、お聞かせください。

足立 当センターが現在の明石に移転したのは1984年で、このとき名称を兵庫県立成人病センターに変え、生活習慣病や糖尿病なども併せて診ることになりました。その後、2007年に制定された「がん対策基本法」を契機に、がん医療への特化という時代の要請もあり、同年4月に現在の兵庫県立がんセンターに名称を変更しました。

当センターの責務は、がん対策基本法に基づき指定された都道府県がん診療連携拠点病院として、兵庫県全体の病院連携の構築などを行うと共に、県内の東播磨圏地区における「地域がん診療連携拠点病院」としての役割も担っています。

受診の方法についてはいかがですか。

足立 全ての診療科は予約制で、地域の医療機関やかかりつけ医からの紹介状を持参し、地域医療連携室で予約をして受診するという流れです。稀に紹介状を持って予約なしでその日に受診される人もいますが、医師会にもお願いし、また地域住民にも理解も得て、約90%の人が紹介状を持って受診する体制はできつつあります。

がんの初期治療を終えた患者の逆紹介(紹介元の医師に戻す)もされていらっしゃいますか。

足立 はい。基本的に治療後は紹介元の医師に経過観察などをお願いしています。ただ、紹介元の専門領域が異なり、がんの経過観察ができない場合などは紹介元の医師、患者・家族と相談した上で適切な医師にお願いしています。

足立先生がこちらに勤務されたのは2001年と伺っていますが、その当時と今では地元の医師会との関係は変わりましたか。

足立 以前から病診・病病・病病診などの地域連携に取り組む動きはありましたが、医師会の役員会などに当センターから医師が参加することはあまりなく、どちらかというと受け身の状況でした。その後、私が地域医療連携を担当するようになり、地元医師会の役員会や研修会などに積極的に参加して意見交換を行ったところ、共通の話題も多く協力も得られて地域連携は非常にスムーズになりました。今では顔を知らない医師会の方はほとんどいないほどです。

やはり実際に顔を合わせ、情報等の交換をすると連携がスムーズに進みますね。

足立 互いの顔が見えるようになると、新たに何かに取り組む際には大きな利点があります。ただ、もともと診療科ごとの連携や地域での関係は順調に進んでいたため、その意味での大きな変化はありませんが、がんの地域連携クリティカルパス(以下、パス)の運用開始時にいろいろとお願いすることができました。

地域連携パスのお話が出ましたので、これについて伺います。2010年に策定された、がんの地域連携パスで、患者の受け入れは進んでいらっしゃいますか。

足立 当センターでは現在400例ほどの実績があります。まず患者に対しては、入院申込みと同時にパスの運用が可能かを確認し説明することとし、患者の理解が得られやすくなりました。また電子カルテで、入院申込み患者の中からパス候補を抽出した後に、紹介元の医師がパスに登録しているかをチェックした上で、未登録であれば登録希望を確認するシステムを導入したため、かかりつけ医の協力も得られやすくなりました。昨年10月頃に再度センター内での意思統一を図り、順調にパス登録件数が増えてきました。その反面、マンパワーが不足し、経過観察や満足度調査が十分とはいえない状態であり、今後は質の評価を重視して慎重に進めなければならないと考えています。

また、センター内には地域医療連携室を設け、医師や看護師、医療ソーシャルワーカー、事務職員など16人を配置し、地域完結型の連携医療推進の方針のもと、病診・病病・病病診連携システムの組織づくりを進めています。具体的には診察予約や検査予約などの患者紹介システム、逆紹介システムの充実、高額医療機器の共同利用、医療技術向上のための情報提供などにより、地域連携を推進しています。

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