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21世紀医療フォーラム 良い医者、良い医療を創るプロジェクト
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「京都大学臨床研究中核病院構想シンポジウム」開催

第12回

2013.11.26 取材・構成:21世紀医療フォーラム取材班 岩田るみ
文責:日経BP社 21世紀医療フォーラム事務局長 阪田英也

去る2013年2月9日(土)、宝ケ池の国立京都国際会館において、「京都大学臨床研究中核病院構想シンポジウム」が開催された。臨床研究中核病院としては初の試みであり、この事業を広く市民、患者団体、関連病院、業界などに普及・啓発することを目的としている。

開催報告の12回目は、メイントラックで行われた京都大学4つの取り組みから、京都大学理事補(研究担当)であり、京都大学医学研究科薬剤疫学教授の川上 浩司氏の講演をリポートする。
(取材・構成:21世紀医療フォーラム取材班 岩田るみ 文責:日経BP社 21世紀医療フォーラム事務局長 阪田英也)

プログラムはこちら(PDF画像が開きます)

社会医学を担うSPH における臨床研究教育

川上 浩司氏
京都大学理事補(研究担当)
京都大学医学研究科薬剤疫学教授 川上 浩司氏

京都大学医学研究科では、日本初の公衆衛生系の専門職大学院(School of Public Health=SPH)として、2000年に文部科学省の設置認可を受け、社会健康医学系専攻が設置された。公衆衛生学は日本ではなじみが薄いが、欧米では医学部との連携も深く、対等な立場での臨床研究の人材養成も両分野が連携して行っている。

そもそも日本における臨床研究といえば、新薬開発に際しての臨床研究、開発型臨床研究(TR=Translational research)のみを思い浮かべる人も多い。しかし、基礎研究を踏まえて、プロトコルを確立し仮説を立てて検証する作業手順によってのみ可能となる臨床研究もある。それが、臨床疫学研究である。

社会健康医学系専攻においては、この2つは研究の欠くことのできない両輪である。その研究分野は予防医療学、社会疫学、環境生態学、医療倫理学、健康情報学、ゲノム情報疫学など幅広く、社会の中での医療、患者、という観点に重点が置かれる。

さらに、疾病治療と、継続治療と経過観察、疾病予防という患者の状態から見た3つの分野を考えれば、それぞれを担うのが開発型臨床研究、EBM研究、臨床・薬剤疫学となる。歴史的に見れば、1960年代に臨床試験がフェーズ1、2、3と3段階に分けられ、その後、臨床研究は医療の技術的な進歩と共に多様化してきた。また、90年代以降、計量経済学の考えが採用され治療の費用対効果が計算されるようになった。さらに近年では、「PCOR=Patient Centered Outcomes Research」という考え方が重視され始めている。その背景には膨大な医療コストの国家予算への負担の増大がある。

PCORは、ある疾患に対して、同じ効果が望める2つの治療法があれば、費用対効果を選択の際に重視するという意味でもある。同時に、新しい薬剤や治療法が確立されようとする際に、あらかじめ費用対効果の分水嶺を定める動きも出てきている。実際に英国では、1つの治療の費用の上限を3万ポンドと決め、その治療が社会に適応するか判断するようになっている。

こうした考え方が患者のメリットになるわかりやすい例は、大腸がん患者の7人に1人は、1錠5円のアスピリンを初診時から飲み続けることで死亡率が大幅に下がるという研究である。誰でも知っているような安価な薬での治療が、最新の高額治療より費用負担が少なく効果が大きい場合があるということだ。

科学的に正しいかどうか、患者と社会にメリットがあるか、こうした視点が、今後ますます必要となってくるであろう。こうした背景をもとに、本学SPHでは臨床疫学、薬剤疫学を軸とした養成コースを開講している。履修項目は医薬品政策と行政、医薬品の開発と評価、医薬品・医療機器の開発計画、薬事・審査などだ。修了者は平成17年~25年3月までの8年間で医科・歯科併せて83名にのぼり、この分野での人材が必要とされていると強く実感させられる。

今後は臨床研究中核病院である大学病院、社会医学系大学院との連携、大学間の連携をより深め、優秀な臨床研究者を教育・輩出することによって、社会健康医学を推進する役割を担っていくことになろう。

(取材・構成:21世紀医療フォーラム取材班 岩田るみ 
文責:日経BP社 21世紀医療フォーラム事務局長 阪田英也)

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