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21世紀医療フォーラム 良い医者、良い医療を創るプロジェクト
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「京都大学臨床研究中核病院構想シンポジウム」開催

第11回

2013.11.05 取材・構成:21世紀医療フォーラム取材班 岩田るみ
文責:日経BP社 21世紀医療フォーラム事務局長 阪田英也

去る2013年2月9日(土)、宝ケ池の国立京都国際会館において、「京都大学臨床研究中核病院構想シンポジウム」が開催された。臨床研究中核病院としては初の試みであり、この事業を広く市民、患者団体、関連病院、業界などに普及・啓発することを目的としている。

開催報告の11回目は、メイントラックで行われた京都大学4つの取り組みから、京都大学医学研究科EBM研究センター特定教授の上嶋健治氏の講演をリポートする。
(取材・構成:21世紀医療フォーラム取材班 岩田るみ
文責:日経BP社 21世紀医療フォーラム事務局長 阪田英也)

プログラムはこちら(PDF画像が開きます)

EBM 研究センターの取り組みと今後の展望

上嶋健治氏
京都大学医学研究科EBM研究センター特定教授 上嶋健治氏

EBMは医療における診断法・治療法確立に欠かせない基礎となっている。基礎研究、臨床研究、臨床試験、治験と、段階を経てエビデンスを積み上げることで、治療薬を開発・評価し、また、標準治療を明確化することで、研究の成果を治療に生かす道筋の科学的正しさを担保しているのが、EBM研究といえる。

その一方、治験後の承認を経て市販が開始された薬剤において、肝臓や腎臓に疾患を持つ人や多剤との併用の場合での副作用が報告されるなど、安全性が疑われるとして、市場撤退した薬剤は、1990年から2004年の間で34種にのぼる。逆に、腎血管性高血圧治療薬として承認されたACE阻害剤は、本態性高血圧や心不全にも有効なことがわかり、適応の拡大へとつながっている。

このように、治験を経て安全性が確認された市販薬であっても、当初は想定していなかった副作用や副産物があることから、市販後の薬剤評価におけるEBMの果たす役割は大きい。

京都大学では、今後の臨床医学研究において、EBMが開発型臨床研究(TR=Translational research)と並ぶ推進領域になると見通し、2001年にEBM研究センターを設立。現在実施中の臨床試験は、前向き無作為割り付け臨床試験からコホート研究・観察研究まで、対象領域も高血圧、糖尿病、脂質異常症から、心疾患、呼吸器疾患、腎疾患、乳がん、肝がんなど、幅広い。それらの研究は、京都大学以外の医療機関との連携の中でも行われている。

また、循環器領域における日本人を対象とする大規模臨床試験「CASE-J」「CASE-J Ex」など、臨床試験データの蓄積も、研究の大きな成果としてあげられる。特に、日本人独自の研究データの集積が行えるメリットは大きい。ハイリスク高血圧患者の心疾患発症率などは、日本と欧米では顕著な違いがみられるためだ。実際に日本のデータ「CASE-J」と欧米での大規模臨床試験データ「VALUE」を比較すると、ともにハイリスク高血圧患者で、年齢層もほぼ同じで、同じ薬剤を使っている人を対象とした大規模臨床試験であっても、心筋梗塞、心不全の発生率は日本では欧米に比べて著しく低かった。日本人を対象とした大規模臨床試験データは、日本人のためのガイドライン作りに必要なエビデンスの提供・発信という面からの貢献度が高い。そのため、CASE-Jについては、広報活動も活発に行っている。

同時に、臨床試験におけるプロトコルについても国内全体の臨床試験の質の向上に寄与する目的で、論文発表を行っている。CASE-J試験についても、実験の工夫についての情報は広報誌などを通じて公開している。

さらに、アカデミア主導の臨床研究のメリットとして、公正性・科学性・倫理性だけでなく、治療下での実臨床試験的な疫学データを取ることや、コホート研究も視野に入れ、難病や患者数が少ない疾患、特殊な術後症例についての研究ができることに加え、研究者の人材育成ができることも、大きな意義を持つ。

今後は、医療・薬剤疫学研究を柱とする、京都大学内の社会健康医学系専攻との連携も深めながら、新薬の評価だけでなく、既存薬の適応拡大につながる研究から市販後臨床試験にも積極的に取り組んでいく方針だ。

(取材・構成:21世紀医療フォーラム取材班 岩田るみ 
文責:日経BP社 21世紀医療フォーラム事務局長 阪田英也)

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