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21世紀医療フォーラム 良い医者、良い医療を創るプロジェクト
トップページ医療を変える高血糖の記憶が鍵を握る糖尿病は「老化のモデル」

高血糖の記憶が鍵を握る糖尿病は「老化のモデル」

第1回(2回連載)

2013.10.29 構成:AGING SUMMIT取材班 但本結子
文責:21世紀医療フォーラム事務局長 阪田英也
山岸昌一氏
久留米大学医学部糖尿病性血管合併症病態・治療学教授 山岸昌一氏
1963年生まれ。1989年金沢大学医学部卒業。1993年金沢大学大学院医学研究科博士過程修了。1996年金沢大学医学部講師。1999年4月ニューヨーク、アルバートアインシュタイン医科大学研究員。2000年11月久留米大学医学部内分泌代謝内科講師。2003年4月同大学医学部心臓・血管内科(循環器内科)講師。2008年10月より現職
受賞歴:American Heart Association (AHA) Basic Science Award(最優秀賞)、日本糖尿病学会リリー賞、Circulation Journal 2008 Best reviewer (第一位)、日本抗加齢医学会奨励賞、福岡臨床医学研究賞など
所属学会:日本循環器学会専門医、日本糖尿病学会専門医・評議員、日本高血圧学会専門医、日本メイラード学会役員、日本糖尿病性腎症研究会幹事、日本老年学会代議員、日本抗加齢医学会評議員、脳心血管抗加齢研究会評議員。現在、文部科学省私立大学戦略的研究基盤形成支援事業リーダー

糖尿病は現代の国民病と呼ばれ、患者とその予備軍を合わせると日本全国に2800万人いると推定されている。自覚症状がないことから放置されやすく、気づいたときには重症化しているケースも多い。また、糖尿病患者がふつうの人より動脈硬化や骨折、認知症などの病気にかかるリスクが高く、10~15年ほど寿命が短いことから糖尿病は「老化のモデル」と考えられている。

久留米大学医学部糖尿病性血管合併症病態・治療学教授の山岸昌一氏は、長年、糖尿病と循環器の専門医として、数多くの糖尿病患者の診療にあたる一方で、糖尿病の血管合併症の研究から老化物質「AGE」に着目してきた。このAGEの正体を解き明かし、体の中にためない生活習慣を紹介した著書『老けたくなければファーストフードを食べるな(PHP新書/2012年)』は、発刊以来大きな反響を呼んでいる。2回連載の1回は、糖尿病によって起こる血管障害やその原因、血糖管理などについて、山岸氏にお話を伺った。
(構成:AGING SUMMIT取材班 但本結子
文責:21世紀医療フォーラム事務局長 阪田英也)

増え続ける糖尿病患者
重大疾患につながる怖さも

まず、糖尿病によって、どのような血管障害が起こるのか教えてください。

山岸 糖尿病は体中の血管に障害が起こる病気です。中でも、血管障害が起こりやすいのは腎臓、目、神経で、これらが三大合併症を引き起こします。まず、腎臓や目の網膜、全身の神経に栄養を与えている血管が障害され、病気が進行してきます。目の領域では視力が落ち、最悪の場合は失明に至ることもあり、糖尿病が原因で毎年新たに3000名が失明しています。人間は情報の約80%を視力に頼っているため、生まれたときから視力に障害のある人は別として、成人になって失明した場合は社会生活に適応できなくなることもあり、極めて重大な疾患です。

もう一つの代表格である腎臓では、現在31万の維持透析の患者がいます。これは成人の410人に1人が日常的に透析を続けていることになり、そのうちの 37.1%、約11万5000人が糖尿病といわれています。これに加え、毎年新たに透析に突入する患者のうち糖尿病を発症する率は44~45%で、このウエートはますます高まる状況です。

糖尿病透析患者の特徴として、透析開始から5年生存できるのは、2人に1人です。他の病気が原因で透析を受ける場合は、これほど予後は悪くありません。例えば、日本で一番多い腎炎(IgA腎症)では、最長で40年も透析を受けているケースがありました。高血圧が原因で透析を受ける糖尿病患者の5年生存率も50%で、これは進行がんに相当します。末期の大腸がんのステージ3で、5年生存率は4割程度といわれています。

問題は、糖尿病患者に重症感がないことです。痛くも痒くもない代わりに、血管合併症が進むと進行がんに匹敵するほど寿命が短い病気です。

糖尿病から透析に移行する患者が増加していると言われました。その原因は何でしょうか。

山岸 糖尿病患者の母体数が増えているからです。つまり、糖尿病患者がものすごい勢いで増加している。ところが糖尿病性腎症は10人のうち4~5人しか発症しません。不幸にしてその中に入ってしまい、血糖コントロールができなければ行くところまで行き着いて透析までいく。最新のデータでは、現在、糖尿病患者は予備軍も含め2800万人ぐらい存在し、10年前と比べて倍の人数が透析に突入していく状況です。

さらに、近年、三大血管合併症以外で重要視されているのが動脈硬化です。動脈硬化は糖尿病でなくても、タバコを吸っていて脂っこいものを食べ続けていると発症します。糖尿病に限定した合併症ではないため、三大という名称こそ付いていませんが、網膜症や透析と同等の重大な意味合いを持っています。

生命を維持していく上で最も重要な臓器である脳が、動脈硬化で詰まって血液が流れなくなる。人間の脳神経細胞は5分以上血流が途絶えると死んでしまい、一生戻りません。障害の大きさでいえば1~2m3程度かもしれませんが、組織が壊死して喋ることができなくなります。同様に、心筋梗塞も心臓の血管が詰まると血液が流れなくなり、あっという間に死に至ります。よく知られた三大血管合併症だけではなく、日本人の生活習慣病と密接に絡んだ動脈硬化症は、糖尿病の人は、そうではない人と比べると、動脈硬化のスピードが15年早くなっています。例えば、糖尿病の60歳男性の血管年齢はそうではない75歳に匹敵します。言い換えれば、心筋梗塞や脳血管障害の基礎疾患となる病気の発症が約15年早まるということです。

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