• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版
21世紀医療フォーラム 良い医者、良い医療を創るプロジェクト
トップページ医療を変える「京都大学臨床研究中核病院構想シンポジウム」開催

「京都大学臨床研究中核病院構想シンポジウム」開催

第10回

2013.10.15 取材・構成:21世紀医療フォーラム取材班 岩田るみ
文責:21世紀医療フォーラム事務局長 阪田英也

去る2013年2月9日(土)、宝ケ池の国立京都国際会館において、「京都大学臨床研究中核病院構想シンポジウム」が開催された。臨床研究中核病院としては初の試みであり、この事業を広く市民、患者団体、関連病院、業界などに普及・啓発することを目的としている。

開催報告の10回目は、メイントラックで行われた京都大学4つの取り組みから、京都大学医学研究科形態形成機構学教授の萩原正敏氏の講演をリポートする。
(取材・構成:21世紀医療フォーラム取材班 岩田るみ 文責:21世紀医療フォーラム事務局長 阪田英也)

プログラムはこちら(PDF画像が開きます)

RNAを標的とする創薬によって難治疾患へ挑む

萩原正敏氏
京都大学医学研究科形態形成機構学教授 萩原正敏氏

ゲノム解析の技術が進むにつれ、難治性疾患と遺伝子やRNA発現異常の関連が、詳細に突きとめられるようになっている。遺伝子の異常が原因の先天性疾患についても、遺伝子のどの部分の、どのような異常が疾患につながるかも明らかになり、遺伝子異常を正す治療法に期待が寄せられているが、遺伝子そのものを操作する技術は技術的倫理的な壁が大きい。

これに対して、我々の臨床研究では、蛍光たんぱく質を発現させるスプライシングレポーターなど、独自の創薬スクリーニング技術を確立することができた。

従来の対処療法的な薬物治療では限界があった先天性難治疾患に対して、RNAの発現をコントロールできる低分子化合物を添加することで、疾病の発症を抑えるという発想のもと研究を進め、いくつかの薬剤候補物質を見い出した。

例えば、主にユダヤ系民族で患者数が多い家族性自律神経失調症は、自律神経異常による心停止などで、40歳までに50%が亡くなるという難知性遺伝疾患である。IKBKAP遺伝子のエクソン20をスキップしてしまうが、カイネチンを添加すると抑制される。

このほか、デュシェンネ型筋ジストロフィー、眼科疾患の加齢性黄斑変成など、従来の薬剤では治療困難な疾患に対する治療薬候補物質も、同様の手法で突きとめられた。特に、デュシェンネ型筋ジストロフィーに対しては、筋肉に直接働きかけジストロフィンたんぱく質を産生させる「TG003」外用剤の研究が進められている。

こうしたRNA発現をコントロールする手法の応用で、がん細胞に特異的なスプライシングに対応し、正常細胞は傷つけずにがん細胞のRNA発現異常のみを抑制する薬剤の開発も理論上可能になる。

また、ダウン症は第21番染色体が人より一本多いことが知られているが、リン酸化酵素DYRK1Aの過剰発現と関連していることがわかってきた。さらに、この酵素は、アルツハイマー病の原因とも推定されている。実際に、ダウン症患者では、健常人の5倍以上の頻度でのアルツハイマー病発症がみられる。そこで、ダウン症とアルツハイマー病の治療に期待されるのが、DYRK1A阻害物質「INDY404」だ。実際にマウスでの実験では効果が確認されている。

また、この一連の技術は病因の解明にも役立つ。米国では現在、自閉症患者が増加の一途をたどっている。日本でも、小学生の約6%は自閉症または発達障害の可能性があると言われる。これに対して、血液のDNA・RNAサンプルを解析することで、遺伝子レベルでの病因が解明されてきている。

病因の解明と、RNA発現異常をコントロールする物質のスクリーニングにおいて、創薬技術が確立されれば、発症や進行を遅らせることが可能になる。今後、RNA発現をコントロールする手法での創薬開発は、分野や診療科を問わず、幅広い分野での応用が進む。また、京都大学臨床研究中核病院という立場から、基礎研究と臨床研究・臨床試験の架け橋になることも期待される。

(取材・構成:21世紀医療フォーラム取材班 岩田るみ
文責:21世紀医療フォーラム事務局長 阪田英也)

医療を変える