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21世紀医療フォーラム 良い医者、良い医療を創るプロジェクト
トップページ医療を変える「京都大学臨床研究中核病院構想シンポジウム」開催

「京都大学臨床研究中核病院構想シンポジウム」開催

第3回

2013.04.23 構成:21世紀医療フォーラム取材班 萱原正嗣
文責:日経BP社 21世紀医療フォーラム事務局 エグゼクティブ・プロデューサー 阪田英也

去る2013年2月9日(土)、宝ケ池の国立京都国際会館において、「京都大学臨床研究中核病院構想シンポジウム」が開催された。臨床研究中核病院としては初の試みであり、この事業を広く市民、患者団体、関連病院、業界などに普及・啓発することを目的としている。

開催報告の3回目は、メイントラックで行われた基調講演から「腎臓の治療、現在我々はどこまで来ているのか:スタチン類の役割」と題したDick de Zeeuw氏の講演をリポートする。
(構成:21世紀医療フォーラム取材班 萱原正嗣 文責:日経BP社 21世紀医療フォーラム事務局 エグゼクティブ・プロデューサー 阪田英也)

プログラムはこちら(PDF画像が開きます)

Dick de Zeeuw氏講演

腎臓の治療、現在我々はどこまで来ているのか:スタチン類の役割
Treatment of the diseased kidney,
where are we today? ; the role of statins?
Chair of the Department of Clinical Pharmacology, University Medical Center Groningen, Groningen, the Netherlands
Dick de Zeeuw氏

Dick de Zeeuw 氏
Dick de Zeeuw 氏
「未充足な医療ニーズ」を満たすために

私の母国オランダでは、優れた研究者として認められるのは患者を中心とする臨床研究に携わっている研究者で、私もその環境のなかでキャリアを積んできた。ところが、1984年にはじめて母国を離れて米国で1年間を過ごしたとき、私は大きな問題に直面した。米国では、“Bench research”、つまり基礎研究に携わっている研究者が、優れた研究者として見られていたからだ。

それ以来、私は日本を訪ねる機会に何度も恵まれたが、日本に初めて来たときも、米国で直面したのと同じ問題を感じた。多くの著名な研究者は、前臨床の研究に携わっており、臨床研究にはそれほど高い関心が寄せられていなかった。

だが、何度も日本を訪ねるうちに、状況の変化を感じている。臨床研究への関心が高まり、「未充足な医療ニーズ(unmet needs)」を満たすには、前臨床研究と臨床研究をいかにつなげるかが重要であることを、多くの人が理解するようになっている。

私は腎臓病の専門家だが、私自身の経験からも、臨床研究の重要性を強調しておきたい。臨床研究抜きにして、前臨床研究へのフィードバックもなされなければ、そもそも前臨床の段階で何を研究すべきかさえもわからない。未充足な医療ニーズを見つけ出す現場は、臨床研究にある。そのことを、私自身の研究にもとづいて紹介したい。

「臨床研究中核病院」への期待

ここ数十年の臨床試験の症例数を見てみると、神経系や心血管の疾患、ガンなどと比べて、腎臓病の症例数は圧倒的に少ない。だが、それは、腎臓病の領域において未充足な医療ニーズがないからというわけではない。未充足な医療ニーズがあるにも関わらず、それを解決するための薬剤や治療法が見つかっていないのが実態だ。

腎臓と心血管には、体重、喫煙習慣、血圧、コレステロール、血糖値など、共通する多数のリスクマーカーがある。これらのリスクマーカーをもとにして、血糖値や血圧、脂質の管理については有効な治療法が確立されているが、腎臓そのものを保護することに関しては、十分に成功しているとは言い難く、世界でも腎臓疾患の罹患率、死亡率は高い。

腎臓疾患に対して、早期、あるいは中期に治療介入すれば、比較的高い治療効果を見込めるが、それでも依然としてリスクは残るし、それが晩期になると治療効果は急激に悪化し、残存リスクはがん治療よりも高くなる。そのことが、世界中での糖尿病性、そして非糖尿病性の腎臓疾患の増加につながり、高い罹患率、死亡率を示す一因となっている。ここに、大きな未充足な医療ニーズがある。

その未充足な医療ニーズへの対応のために、新しい標的と新しい医薬品が強く求められている。新しい標的として注目されているのが「尿中アルブミン」であり、医薬品としては、従来は高脂血症に対して広く使われていたスタチン類が、慢性腎臓病の治療に効果が持つことがわかり始めている。新しい標的に対する治療法を発見し、医薬品の有効性を実証することは、臨床研究が果たすべき役割だ。

このたび、臨床研究中核病院として指定された5つの病院は、こうした臨床研究を主導する立場として大きな課題を背負っている。これまでに蓄積された前臨床研究の知見と臨床研究の知見を組み合わせ、未充足な医療ニーズへの対応策を見つけ出し、世界の医療へ貢献されることを期待している。

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