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FP快刀乱麻

頼母子講(たのもしこう)に学ぶお金の構造

2014年10月22日(水)

 近年あまり聞かれなくなった地域の金融システムに、頼母子講(たのもしこう)というものがあります。これは鎌倉時代に発生し、その後「無尽(むじん)」や「ユイ」という名称で脈々と受け継がれ、地方ではまだ現存しています。例えば、沖縄では「模合(もあい)」という呼称で日常的な習慣となっているものですが 、歴史から学ぶと特に離島ほど色濃くこの習慣が残っているようです。厳しかった時代の知恵として、「自分達の島からはキャッシュアウトさせない」という具体策として根付いてきたものと思われます。

 頼母子講の仕組みはシンプルで、まずは主宰者(講元、座元)が信用のおける仲間を集めてスタートします。仮に毎月10万円ずつ持ち寄る仲間が12名集まってスタートしたとしましょう。すなわち、毎月合計120万円が持ち寄られ、仲間の1人が120万円を受け取ります。積立は毎月行われ、その都度一人が120万円を受け取っていき、12カ月後に12人目が120万円を受け取って終了します。一見すると損も得もないように見えますが、これが地域からキャッシュアウトさせないための金融システムなのです。

 例えば今月、Aさんが子供の入学金120万円を納めなければならなかったとしましょう。しかし、Aさんの手元に現金がほとんどない場合、普通は金融機関や高利貸しからお金を借りて入学金を支払い、その後に借りた120万円を返済することになります。当然、金融機関や高利貸しに対して一定の利息を支払わなければなりません。個人ごととはいえ、その人の住む地域全体からみると、利息という形でお金が地域からキャッシュアウトしてしまっています。
 その点、頼母子講の場合は初月に集まった120万円をAさんが持ち帰れば、利息を支払うことなく入学金を支払い終えます。一人では成し得なかった入学金の支払いが、地域住民の助け合いにより、その地域から1円たりともキャッシュアウトさせずに済む事例です。相互扶助は精神論として片付けられやすい側面がありますが、実は経済的な効果が大きいのです。

銀行の仕組みと頼母子講の違い

 銀行は預金者からお金を集め、それを人に貸します。一見すると頼母子講の仕組みと似ていますが、お金を集めている団体が営利を目的としている点で大きく異なります。営利活動団体は営利が優先ですから、そこにお金周りの相談をしても私たちの利益に沿った答えが返ってきにくいことは容易に想像がつきます。
 例えば、銀行に住宅ローンの返済期間について相談したとしましょう。「30年返済と35年返済ではどちらがいいですか?」と聞けば、大抵の銀行は「皆さん悩まれますが、35年返済にした方が返済は楽になります。そしてお金が貯まったら繰り上げ返済をした方がいいですよ」と回答します。実際に聞き覚えのある読者も多いでしょう。
 確かに30年返済より35年返済の方が毎月の支払いは少なくなりますが、2000万円を金利1.88%で借り入れた場合、支払う利息の総額は30年返済の場合が約618万円なのに対し、35年返済では約731万円と113万円も高くなります。一方、毎月の返済額がどれだけ楽になるかというと、30年返済で約7万3000円、35年返済では約6万5000円とわずか月8000円の差しかありません。つまり営利活動団体に相談すれば、その団体の利益が相談者の利益よりも優先され易いという構造上の欠陥があるのです。

 そもそも営利活動団体である銀行にお金の相談をすること自体がナンセンスという話ですが、頼母子講のように自ら運営する団体でない限り、個人個人できちんと答えを見つける必要があることを理解しておきましょう。お金回りのテクニックや知識の前に知っておくべきは「立ち位置の違いにより、アドバイスが変わってくるお金の構造」なのです。

このコラムについて

 このコーナーは、日経マネー本誌やTV、新聞等でもおなじみの著名ファイナンシャル・プランナー各氏が毎週交代で執筆する辛口コラムのコーナーです。今の金融界をズバッと斬る直言から金融制度や消費者への提言、最近の金融ニュースの注目ポイント、またFPならではの役立つノウハウまで、幅広い内容を取り上げていきます。更新は隔週水曜日です。

市川 貴博(いちかわ・たかひろ)
市川 貴博

 生活経済研究所長野 主任研究員。
住宅会社のトップセールスとして活躍する傍ら、顧客の住宅ローンとライフプランを真剣に考えるようになり、労働者のマイホーム取得時の総合アドバイスと資金計画を多数サポート。2011年労働組合シンクタンク「生活経済研究所長野」に参画後、労働組合のコンサルタントとして全国で講演中。CFP認定者


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