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日経マネーDIGITAL

FP快刀乱麻

恐れるは運用リスクにあらず

2014年9月2日(火)

 厚生労働省によると、2014年3月末の企業型確定拠出年金(以下DC)の加入者数は約464万人、実施事業者数は約1.8万社でいずれも増加傾向だそうです。同時に、開始10年目を迎えた2010年辺りからDC関連のFPの業務も確実に増えてきているように思います。制度普及とは裏腹に、勤労者の多くが運用に懐疑的だったり、リスクを恐れたりしているからです。「こんな少額を投資してどうなる」「どうすれば損が最小限で済むか」など、企業責任だった運用リスクを押し付けられた感覚が抜けないままでいます。こうした勤労者の意識を変えるには、根幹となるお金の仕組みを知ることが有効です。

「細く長く」時間を味方につける

 (A)毎月1万円を30年間運用するケースと、(B)毎月3万円を10年間運用するケースの2つがあるとしましょう。(A)の「細く長く」タイプも(B)の「太く短く」タイプも、投資累計は360万円で同額です。しかしここに複利で1%の運用益が付くと、417万円になる(A)に対し(B)は377万円と、(A)の「細く長く」に軍配が上がります。金利が1%なら差額は40万円ですが、3%、5%となると(A)が571万円、797万円と増加するのに対し、(B)は413万円、453万円にとどまることから、差額は3%で158万円、5%では344万円と元金に迫るほどに広がります。
 「細く長く」はDCでも実践可能です。投資額が少ない場合でも、退職まで長い時間を運用に充てられます。毎月1万円を40年間投資すれば3.26%の運用の場合、元金(480万円)は2倍になります。投資額を増やしても10年間で倍増させるのは困難を極めますが、時間を稼ぐことで容易になるわけです。すなわちDC運用は、時間を味方につけられるかどうかにかかっています。

長期投資に向かないもの

 DC運用では、リスクを恐れるあまり0%に等しい超低金利を承知で「元本確保型」に資金を寝かせる勤労者が多いのが実情です。しかしこれでは長期投資の恩恵を受けるには至りません。金利0%の時は(A)(B)共に360万円で差額が生じなかったことを思い出してください。低過ぎる金利では時間が味方になり得ず、そもそも時間をかける意味がありません。DCに運用としての価値を見出すのであれば、「元本確保型」以外の商品でリスクテイクする必要があります。

前払い選択で有効活用

 DCと並行して住宅ローンを抱える勤労者も多いでしょう。超低金利下とはいえ返済が長期に渡る場合は要注意です。2000万円を1.92%(2014年8月末時点の「フラット35」東京都内の平均金利)、元利均等返済した場合、25年返済なら(1)毎月の返済額は8.3万円、(2)利息総額520万円です。
しかし30年返済だと(1)7.3万円、(2)633万円、
35年返済では(1)6.5万円、(2)748万円になります。
 返済期間を長くするほど毎月返済額は減るが、利息総額は100万円単位で増えていきます。住宅ローンが貸し手により実践される「細く長く」「時間を味方につけた長期運用」そのものだからです。借り手の勤労者には「時間を敵に回すマイナス運用」でしかなく、放置すればDCの運用益は永遠に水泡に帰すことになります。

 DCを運用せずに受け取り、住宅ローン返済に回す手もあります。前払い選択の活用です。35年返済の場合、毎月僅か8000円多く返済するだけで35年返済を30年に短縮でき、一瞬にして115万円(748万円-633万円)の利息を取り返せます。
 運用を恐れる反面で住宅ローンには寛容な勤労者がいるとしたら、根幹となるお金の仕組みを知ることから始めてください。「元本確保型」は長期投資を放棄するだけでなく、住宅ローンのマイナスを取り返す機会すら逸するという最もリスキーな選択だと気付くはずだからです。

このコラムについて

 このコーナーは、日経マネー本誌やTV、新聞等でもおなじみの著名ファイナンシャル・プランナー各氏が毎週交代で執筆する辛口コラムのコーナーです。今の金融界をズバッと斬る直言から金融制度や消費者への提言、最近の金融ニュースの注目ポイント、またFPならではの役立つノウハウまで、幅広い内容を取り上げていきます。更新は隔週水曜日です。

関口 輝(せきぐち・あきら)
関口 輝

 生活経済研究所長野 主任研究員。住宅メーカー、損害保険会社と転職を経る中で、“顧客にはお金の真実が全く伝えられていない現状”を目の当たりにする。一般勤労者が正しい知識と問題意識を持つことの重要性を認識し、2001年労働組合シンクタンク「生活経済研究所長野」に参画。現在、非営利活動団体(労働組合・関連団体)へ活動の中心をシフトし、お金の真実を伝えるべく講演を中心に精力的に活動中。AFP認定者


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