激しいコンテストを勝ち抜いた言葉達

 改めて念を押しておくが『辞書になった男』の読みどころは拙文とは全く別の所にある。丁寧な取材に基づく壮大なヒューマンストーリーだ。

 あえてそこを外して私がお伝えしたかったのは、国語辞典そのものの有用性だ。辞書には「現実」がぎっしり詰まっている。「ネットさえ覗いていれば、今が見える」と安直に思わない方がいい。吟味し尽くされた言葉、用例から、今という時代とそこに生きる人々の姿が浮かび上がって来る。「言葉による世の中の理解」はコミュニケーションの基本だ。

 優れた辞書は上記2冊に限らない。多くの編纂者達が命をかけて拾い集め、激しいコンテストを勝ち抜いた言葉たちを我々の武器にしない手はない。