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日経マネーDIGITAL

CFA流『さんない』投資塾

第39回 2013年の株価上昇が示唆する本当の意味

2013年12月30日(月)

世界的な金融アナリストの資格であるCFA。日本でプロとして活躍中の現役バリバリCFAの有志が日経マネーの読者に向けて、毎月交代でコラムを執筆します。初心者や投機や短期投資のみが投資だと思っている方に、本当の投資、資産運用を知っていただきたいと思います。合言葉は、「急がない、やめない、無理しない」。毎月1回の更新です。
CFAって何?という方はこちらからどうぞ。→ ごあいさつ

JPモルガン・アセット・マネジメント株式会社 投資戦略ソリューション室長
鈴木 英典, CFA

 去る11月28日、日経平均株価は終値ベースで1万5727円を付け、約半年ぶりに年内最高値を更新しました。苦節6カ月で高値更新となった理由は、直接的には円安、間接的には米国の超金融緩和縮小懸念の後退や予想以上の雇用者数増となった10月の米国雇用統計と言われていますが、果たして、本当にそうでしょうか?タイミング的には、また、表面的には、その通りに見えますが、2013年の1年間という少し長い目で世界全体の株価の動きを振り返ってみると、また、別の風景が見えてきます。
 下図は、世界45カ国の株式市場の騰落率を、年前半と後半 に分けてランキングしたものです。これを見ると、前半、後半で顔ぶれがまったく違っていることがわかります。

(出所:Bloombergのデータをもとに作成、MSCIの国別指数現地通貨建てプライスリターン、年前半は2013年1月~6月、後半は7月~10月、上記は過去の実績であり、将来の成果を保証するものではありません)

 2013年前半、世界の株式市場をリードしたのは、印象通り、ユーロ圏以外の先進国です。33%の上昇で断トツ一位となった日本を始め、米国、スイスも10%を超える上昇率です。同時に、不振といわれていた新興国でも、フィリピン、インドネシア、マレーシアといった東南アジアの国々が上位に食い込んでいます。
 一方、本当に不振だったのが東南アジア以外の新興国とユーロ圏です。30%下落で最下位となったペルーを筆頭に、中国、ブラジル、ロシアといった新興国を代表する国々がワースト10に顔を並べています。また、ユーロ圏は先進国、新興国を問わず低迷、-21%チェコ、-10%のポーランド、イタリアがワーストランキング入りしています。
 全体を見ると、年前半、株価が上がった国は、45カ国中22カ国、下落した国は23カ国とほぼ半々で、ユーロ圏以外の先進国の多くは上位半分の値上がり国に、ユーロ圏と新興国の大半は下位半分の値下がり国に入っています。

 しかし、7月以降、この状況は劇変します。6月末から11月末の5カ月間、株価が上がった国は45カ国中、実に41カ国にも及び、ほぼ半々だった前半とは雲泥の差です。
 しかし、それ以上に大きく変わったのは、その中身、つまり、顔ぶれです。上位陣は、40%上昇のギリシャを筆頭に、33%上昇のフィンランド、29%上昇のスペイン、25%上昇のイタリア、アイルランドとユーロ圏諸国が続きます。また、新興国の復活も目覚ましく、エジプト、中国、チェコ、韓国、ロシア、ブラジル、南アフリカの7カ国が10%超えの上昇となりました。

 その結果、上昇率上位15カ国は中13カ国が欧州諸国、残り2カ国が欧州以外の新興国という構成です。ユーロ圏以外の先進国では米国の17位が最高という結果です。つまり、リード役は、年前半の日米を中心とするユーロ圏以外の先進国から、年後半は欧州諸国と新興国に完全に入れ替わっているのです。

 さて、問題は、このような入れ替わりの背景にある原因です。
 まず、認識すべきは、2013年、世界の株価が大きく上昇したのは7月以降の年後半だということです。日本株が年前半に大幅に上昇し、後半伸び悩んだこともあり、日本にいると、2013年に株価が上昇したのは年前半のような錯覚を抱いてしまいますが、実際、世界全体の株価が上昇したのは年後半です。
 そして、その年後半のリード役は、日米を中心とするユーロ圏以外の先進国ではなく、日本では足を引っ張ったという印象を持たれがちな欧州諸国と新興国です。さらに、新興国の中身を見てみると、年前半、好調だった国々は、ユーロ諸国と経済的な関係が比較的薄い東南アジアの国々で、年後半、上がり調子になったのは、欧州域内の新興国と、欧州と経済関係が比較的密接な新興国です。

 このように見てみると、そもそも、2013年、株価が新たな上昇トレンドに入ったのは、米国の超金融緩和措置の縮小が先延ばしになった9月ではなく、もっと前の7月で、すると、その主因は、米国の超金融緩和措置縮小の先延ばしではなく、欧州の重債務問題が峠を越えたことだという考えが、俄然、説得力を持ってきます。このように考えると、上述した国別の株価の動向がすべて腑に落ちるのです。
 では、それは何を意味するのか?そもそも、多くの欧州諸国の財政問題が深刻化したきっかけはリーマンショックです。そして、このリーマンショックの余波として生じた欧州債務問題が解決に向かい始めたことを、今年、株式市場が織り込み始めたということは、また、一つ、08年の世界金融危機の後遺症の克服に世界経済が成功したということを意味します。つまり、世界経済は、今年、また、一歩、経済・金融の正常化に向かけて歩みを進めたということになります。

このコラムについて

世界的な金融アナリストの資格であるCFA。日本でプロとして活躍中の現役バリバリCFAの有志が日経マネーの読者に向けて、毎月交代でコラムを執筆します。初心者や投機や短期投資のみが投資だと思っている方に、本当の投資、資産運用を知っていただきたいと思います。

<ごあいさつ>

日本CFA協会元会長/ウェルス・マネジメント・フォーラム代表幹事 岡本和久
「投資のプロたちが皆さんに本当にお伝えしたいこと」


このコラムでは質問コーナーも設けます。どんな初歩的な質問でも結構ですのでどんどんお寄せ下さい。
(ただ、個別銘柄に関する相談や短期的な相場見通しについてはお答えできません)。

<このコラムへの質問はこちらからどうぞ>
問い合わせ内容を「CFAに質問」としてください。

日本CFA協会 ウェルス・マネジメント・フォーラム(WMF)
日本CFA協会 ウェルス・マネジメント・フォーラム

 世界中の投資・資産運用業界でスペシャリストの証として認知されている専門家資格CFA。WMFは、日本におけるCFA資格保有者や受験者に対し、専門知識の向上と相互交流の場を提供している非営利団体「日本CFA協会」内において、CFAの持つ知識を少しでも一般投資家の方の役に立てたいと考えるメンバーが集まり2008年秋に結成された会。現在その啓蒙活動の範囲を徐々に拡大中。


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