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「3冊だけ」で仕事術向上! ――奥野宣之「ビジネス書、徹底比較レビュー」ビジネス

「ブラック企業」を過去に葬ろう ――過渡期の雇用環境を生き抜くための3冊(4/6ページ)

2013.09.27

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日本独自の「メンバーシップ型雇用」

 続いての『若者と労働 「入社」の仕組みから解きほぐす』にそのヒントがある。

 本書は、日本の労働社会の成り立ちや若年者の雇用問題を一から解説していく、という非常に手の込んだものだ。著者は労働省出身で、現在は独立行政法人で労働政策を研究する濱口桂一郎氏。「上の世代はずるい!」「若者は我慢が足りない!」という具合に、感情的になりがちな論説とは一線を画し、データを淡々と積み重ねて、岐路に立つ「日本型雇用」の姿を浮き彫りにしていく。

 全編を通じて、軸になっているものに欧米式の「ジョブ型雇用」と日本独自の「メンバーシップ型雇用」との対比がある。

 その違いとは、「仕事に人が付く」か「人に仕事が付く」か、ということだ。少しややこしいけれど、次の文章を読めばピンと来るのではないだろうか。

(引用者註:ジョブ型の労働社会とは)例えば、私は旋盤操作という「仕事」のできる人です、私は経理事務という「仕事」のできる人です、私は法務という「仕事」のでできる人です、といったレッテルをすべての労働者がぶら下げているというイメージです。労働者はみんなそのレッテルによって労働市場に自分を登録し、会社などに対して売り込みを行うのです。(中略)
 これに対して日本では、医療の世界のような特殊な分野を除けば、そういう意味での「職業」はあまり、いやほとんど確立していません。多くの労働者がぶら下げているレッテルは、私はこの「仕事」がこのくらいできますというレッテルではなく、私は何々という会社の社員ですというレッテルです。(若者と労働/P.33)

 日本の正社員というのは、世界に類を見ない特殊な雇用契約だと著者は指摘する。
 その最大の特徴は、仕事内容と勤務地が限定されていないことだ。たとえば、日本の会社では、編集者が翌月からネクタイを締めて総務部で働くことになったり、地元の大阪で働いていた営業マンがいきなり東京への転勤を打診されたりするのは珍しいことではない。

 会社の「ここでこの仕事をやってほしい」というリクエストを、すべて受けなければならないという契約に事実上なっているのだ。

 その代わりとして会社には厳しい解雇規制があり、労働者の生活と身分を何十年も保障しなくてはならない。大学を出たばかりで何もできない若者も、会社の一員(=メンバー)として、一人前になるまで社内教育が受けられるというわけだ。

 このメンバーシップ型雇用の成立過程と功罪を説明すると長くなるので、本書を読んでほしいのだが、筆者流に単純化すると、ジョブ型とメンバーシップ型の雇用契約の違いは次のようになる。

●ジョブ型の場合
労働者「コレができます」
会社「じゃあコレだけ給料を払うよ」

●メンバーシップ型の場合
労働者「すべてを捧げます!」
会社「一生面倒見てやる!」

 これが、結婚にも例えられる「日本の就職」だ。
 ところが、ごぞんじの通り日本から終身雇用はなくなりつつある。そこにつけ込んできた寄生虫がブラック企業というわけだ。ついでにブラック企業も書いてみるとこんなイメージだろうか。

●ブラック企業の場合
労働者「採用して下さい」
会社「じゃあすべてを捧げろ!」
労働者「いつか報われるんですよね?」
会社「もちろん!(嘘)」

 ブラック企業は日本のメンバーシップ型雇用から生まれた“鬼っ子”なのだ。

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