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乗り移り人生相談ライフ

乗り移り人生相談:【197】兎角に人の世は暇つぶしである(1/4ページ)

2013.05.30

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Q
生きることに疲れた私に、生きる希望を下さい

 智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。兎角に人の世は住みにくい。この一節のシマジさん流の解釈と、もし、この一節と同じようなことを思ったことがあるのならば、どうやって乗り越えたかを教えて頂きたいと思っています。生きることに疲れた私に、生きる希望を下さい。
(39歳・女性)

ミツハシ 生きることに疲れたとは穏やかじゃないですね。

シマジ  「生きる希望をください」と言うくらいだから、相当なもんだな。

 漱石の『草枕』を引いている相談者には悪いが、俺はあまり漱石を評価していないんだ。少年時代には人並みに漱石を読んだがどうもピンと来なかった。「毒蛇は急がない」というタイのことわざを開高(健)さんから教わり、これを自らのモットーとして毒を溜め込んでいくようになってからは、ますます漱石が合わなくなった。俺は鴎外のほうが圧倒的に面白いと思うね。『大塩平八郎』や『渋江抽斎』なんかを読むと、男の物語だと思う。片や『坊ちゃん』だろ。毒蛇の口に合わないんだ。

ツヴァイクの『人生の星の時間』を薦めよう

ミツハシ 神経衰弱は毒蛇には似合いませんからね。

シマジ  そうなんだ。よく知られているように、漱石はロンドン留学時代に神経衰弱で引きこもりになった。明治の時代に国費で英国に留学するなんていうのはエリート中のエリートだ。それが下宿から外に出られなくなってしまうというのは、生きるパワーが弱いんだと思う。いまで言う「草食系」だな。俺は食い物と同じで、脂の滴るようなこってりしたパワーのある文学が好きなんだよ。草食系の小説はゴメンだ。だから、太宰なんかは生理的に受け付けないんだよ。

 やっぱりバルザックの人間喜劇だ。ヴォートランのようなしぶとく明るいパワー満点の肉食系悪党に心が躍る。相談者には寝食を忘れてのめり込み、読後にパワーが湧いてくるような本を読んでほしいね。だとすると漱石でなく『ゴリオ爺さん』だ。もっとも、生きることに疲れた状態では長編を読むのはしんどいかもしれない。そうだとすれば、短編集にしよう。ツヴァイクの『人類の星の時間』を薦めよう。

ミツハシ そう言えば、伊勢丹メンズ館のサロン・ド・シマジにも『人類の星の時間』を置いていますね。

シマジ  これまでに、サロン・ド・シマジで『人類の星の時間』を20冊売ったんだ。買ったお客の中には、俺にサインをしてくださいという者までいてね。さすがにツヴァイクの作品に俺がサインするわけにはいかないから、12の短編をこの順番で読むといいという俺のお薦めを目次に記してあげた。

 まずは「南極探険の闘い」だ。次に「一と晩だけの天才」そして「エルドラード(黄金郷)の発見」を読み、あとは好きに読むといい。これだけ、本を宣伝し、売り上げに貢献しているんだから、みすず書房の社長は俺に感謝状の1つでも寄こすべきだと思わないか。

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