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今週の日経ビジネスはこう読め!ビジネス

インドネシアでパンを売る

2013.04.08

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 日本の主食はコメからパンに――。

 総務省の家計調査(2人以上の世帯)によると、一般家庭の食料品への支出額で、2011年に初めてパンがコメを上回りました。「コメ」には弁当やおにぎりなどが含まれていないという事情はありますが、日本人の食生活が大きく変わっていることの証左と言えます。

 日本にパン食の文化を根付かせたのが学校給食であることはよく知られています。今年40歳になる筆者が小学生だった時代も、給食に出てくるのはほとんどがパンで、たまに米飯や麺類が出る程度でした。

 公益財団法人東京都学校給食会のホームページを見ると、戦後、東京都で学校給食が始まったのは1946年(昭和21年)1月だそうです。当時の給食の説明として、こんな文章が掲載されています。「当時の給食用物資は米軍放出の缶詰、ララ援助物資の小麦粉、ミルク、野菜、調味料及び燃料等でした」。ここに登場するララ(LARA)とは、米国の「アジア救援公認団体(Licensed Agencies for Relief in Asia)」の略語で、戦争直後で物資が不足していた日本に様々な物資を提供してくれました。

 米飯給食が導入されたのは1976年(昭和51年)。現在では、ほぼ毎日米飯を出す「完全米飯給食」の学校も増えてきていますが、戦後の給食から広がり始めた「パン食」の文化は確実に日本に定着しました。

 普通の家庭の主食は3食ともコメというインドネシアで今、パン食文化の普及を目指す日本企業があります。4月8日号の特集「インドネシア」で取り上げた双日と敷島製パンです。地元の財閥大手、サリムグループとともに立ち上げた合弁会社は、物流の仕組みも小売店での販売体制もない中、パン市場を作り出すべく自転車でパンを売り歩くという地道な販売戦略を取っています。

 特集には、双日インドネシアの取締役のこんな言葉が出てきます。「子供たちは大事なお客様」。

 子供たちは、昼食やおやつとしてパンを買ってくれる現在の顧客であると同時に、小さい頃からパンを食べる習慣を身につけることで、将来の巨大な顧客を生み出してくれる可能性を持った存在です。ちょうど日本人が学校給食からパン食文化を身につけていったように、双日と敷島製パンも「インドネシアはコメ食文化」という現在の常識にとらわれず、インドネシアにパン食文化を根付かせようとしているのです。

 特集ではインドネシアという群島国家の多様性に焦点を当てています。インドネシアは「イスラム国家」「資源大国」といった常套句だけではとても捉えきれない「未完の大国」です。現状分析や今の常識にとらわれていては、商機をつかまえることはできません。

 そしてこれは、多様性を宿命的に内包しているインドネシアに限った話ではありません。歴史的にコメを食べてきた日本でもパンがコメを抜いたように、「今」だけを見ていてはとらえきれない商機はどこにでもあるのです。今回の特集では、インドネシアという国の今を知ることができるだけでなく、新しい市場をいかに作るかという普遍的なテーマについても考えさせられます。ぜひご一読ください。

日経ビジネス最新号特集
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覚醒する「未完の大国」

人口世界第4位、GDP前年比6%以上。可能性に満ちた、巨大市場をどう攻める?先入観を覆す、現地取材でわかった「見えない商機」から、市場を作り出す先行企業の着目点まで、多様性市場の攻略に迫る総力特集。


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