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今週の日経ビジネスはこう読め!ビジネス

50万円カーの衝撃

2013.03.25

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 「できるだけ安くしていくということは、今まで閉じていた世界を開放していくことだ」。これは米グーグルの盲目のプログラマー、T.Vラマーン氏の言葉です。ラマーン氏はグーグルで年齢や身体の条件に関わらずアクセスできる環境を作り出す「アクセシビリティ」のリサーチサイエンティストの仕事をしています。

 例えば、急速に普及が進むスマートフォン。健常者にとってはスクリーンを「タッチ」して操作することはスマートなのかもしれませんが、ハンディキャップを持つ人にとって「ボタン」は重要な要素でした。ラマーン氏はこうした環境の変化に伴い、操作をバイブレーションで伝える機能や音声で案内する機能などをグーグルが提供するOS(基本ソフト)「Android(アンドロイド)」に搭載し、日々、機能改善を進めています。その彼のインタビュー取材で最も印象に残ったのが「価格」についての言及でした。私自身、考えも及ばなかったことだったからかもしれません。

 彼はこう言いました。「欧米社会は、安いということの大切さを忘れがちだ。安ければ、それだけ様々な人に利用する機会を与えることになるんだ」と。例えばラマーン氏はスマートフォンが登場する以前に携帯電話を使えるようにするためには、端末購入に400ドル、通信費で500ドル、専用ソフトウエアに1000ドルかかっていたと言います。今では、スマートフォンにはあらかじめアクセシビリティ機能を標準で備え、ハンディキャップを背負わない人と同様、同じ価格で購入できます。「価格」こそがアクセシビリティにとって最もインパクトのある要素だと訴えました。つまりは、どれだけ使いやすくても、価格が高ければ手の届かない代物になる。とどのつまり、真のアクセシビリティ環境を提供していることにはつながらないということです。

 今、携帯電話の世界では次のテーマとして新興国の開拓に視点が移っています。必ず取り上げられるのは「低価格」であること。そして、今注目されているのは「iPhone」という圧倒的シェアを持つスマートフォンを販売する米アップルがはたして新興国向けに競争力のある低価格端末を販売できるか、です。現時点で最大のライバルとなるアンドロイド陣営からは100ドルスマホが既に登場しています。また、年内には米モジラコーポレーションが年内に投入する「Firefox OS」を搭載するスマートフォンや、韓国サムスン電子・米インテルが主導する「Tizen」を搭載するスマートフォンも登場予定。これらのOSはメーカーに無償で提供されるため、次々と低価格端末が出てくる見通しです。

 今回、日経ビジネス3月25日号特集「50万円カーの衝撃 ~車はどこまで安くなる~」では自動車市場に押し寄せる価格破壊の波を描きます。汎用部品を調達して組み立て、安価にクルマを作る時代の到来。家電のようにコモディティー化が進む自動車業界において、日本企業はどう戦っていくべきかについて言及しています。「過剰品質」という壁、「「ケイレツ」という壁。日本の家電メーカーの凋落のデジャヴ感すら覚えます。ただ、今なお世界的に見ても競争力のある日本の自動車メーカーですから、まだ勝負は決していません。大胆なコストカットを実現するための変革はこれからと言えます。

 先のラマーン氏はこうも言いました。「安い端末というと、みんな新興国市場の話だと言う。しかし、これは先進国にとっても重要なことだ」。低価格化は新興国市場だけにとどまる話ではありません。先進国においても低価格化が進むということは、それだけアクセシビリティは高まります。若者によるクルマ離れが著しいと言われる日本ですが、圧倒的に安いクルマが新しい市場を拓く可能性もまた、秘めているのかもしれないのです。

日経ビジネス最新号特集
『50万円カーの衝撃』
クルマはどこまで安くなる

価格破壊の波が自動車市場に押し寄せている。インドの「超低コストインフラ」の実態から、不況の欧州市場を快走するダチアなど世界のクルマ作りの現場と、日本車の生き残り策を探る。


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