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今週の日経ビジネスはこう読め!ビジネス

世界の果ての現実

2013.03.11

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 勝ち負けで論じる話ではありませんが、写真に負けない文章を書きたいと思って十数年、この仕事をやってきました。優れた写真はそれ一枚ですべてを伝えます。喜びや悲しみだけでなく、背景や意図、時に正邪まで――。一枚の写真に衝撃を受け、思考し、行動につなげていった経験を持つ人は決して少なくないと思います。

 私は文字の世界に生きている人間なので、写真に憧れ、嫉妬してきました。実践できているかどうかはともかく、頭の片隅にはいつも写真では表現できないことを文字で表現したいという思いがありましたし、ファクト集めや構成、言葉選びも現象や本質を視覚的に伝えることを意識してきました。

 ただ、当たり前ですが、百万言を費やしても、到底かなわないと思う写真にもよく出会います。今週号の特集「どうする『核のゴミ』」に出てきた写真もそうでした。

 1986年に起きたチェルノブイリ原発事故。事故後、27年が経ちましたが、後始末はいまだに終わっていません。汚染された「チェルノブイリテリトリー」はウクライナ・ロシア・ベラルーシの3国で14万5000k?。このうち原発周辺の168の市町村が廃墟になりました。数字には諸説あるようですが、約40万人が避難し、700万人が被災しました。将来的な死者は4000人とも、数十万人とも言われています。

 取材班が訪れたウクライナ北部のプリピャチ市も無人の廃墟でした。原発労働者の街として栄えたプリピャチは高層マンションや病院、公園などが整備された恵まれた街でした。ただ、原発事故でプリピャチの時は止まりました。現地には事故の5日後にオープン予定だった遊園地跡があります。風に揺られる無人の観覧車は、事故処理の現実を如実に物語っています。

 福島第一原子力発電所の事故から2年が経ちました。原発自体の収束作業は緒についたばかり。汚染地域の除染や復興も遅々として進んでいません。しかも、「核のゴミ」に伴う問題は今後、深刻化していきます。

 これまで、核のゴミは正常に稼働している原発の放射性廃棄物を指していました。ところが、今後は事故によってまき散らされた放射性物質が積み上がっていきます。除染で出たゴミの仮置き場の確保でさえ難儀している現状をみれば、中間貯蔵施設や最終処分場の合意を得るのは並大抵ではありません。

 特集では廃墟となった幼稚園の写真を使っています。原子炉から30km圏内、強制移住で「死の街」になった村の幼稚園で取材班が撮りました。似たような写真はほかにもあるかもしれません。人形や瓶は後の人が並べ直したものかもしれません。ただ、このカットには思わず考えさせる何かが宿っています。

 核燃サイクルが事実上、破綻した今、増え続ける核のゴミをどうするのか。ぜひ本特集を通して、考えてみて下さい。

日経ビジネス最新号特集
『どうする核のゴミ』
チェルノブイリ・英国に学ぶ現実解

福島原発の事故から2年。復興を妨げる「核のゴミ」が、経済再生へ動き出した日本全体にとっても急所となりかねない。世界が苦悩する放射能廃棄物の処分の現実解を探る。


【最新号の詳細はこちらから】
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