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FP快刀乱麻ライフ

5000万円のマンションは月12万円の支払いで買えるのか? 

2012.10.03

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 最近は住宅購入に関する相談が続いている。先日、非常に勉強熱心なご夫婦が来店したときにおっしゃったことが印象的だった。

「5000万円のマンションが月12万円の支払いで買えるわけがない!」

 これはたまたま事務所に投函されたマンションのチラシを参考に見て頂いた時の反応だ。チラシには約5000万円のマンションの
「月々の支払い額」として12万程度の金額が返済例として載っていた。5000万円もあれば都心部のファミリー向けマンションも買える予算だ。知識のない人であれば「えっ、この額でここに買えるの?」と思う人も居るのだろう。

 チラシのシミュレーションでは、頭金が1割で4500万円程度の借入れ、金利タイプは変動金利の最低水準0.775%、返済期間は35年となっている。たしかに計算をすると毎月の返済額は12万2365円となるのだが、これは返済額が最も低く見えるように計算しているだけの非現実的なプランだ。では実際はどうなのか、もう少し現実的に考えてみたい。

 まず元々のシミュレーションが、考慮すべきものを考慮していない。

 諸費用といって、購入時には物件価格以外に様々な費用が発生する。新築物件では物件価格の5~7%程度がかかる。5%と考えても250万円が追加で必要となる。加えて毎月の管理費と修繕積立金で月に1.5~2万円程度、固定資産税も考慮すれば一ヶ月あたり3万円程度は必要と考えておいた方がいいだろう。この時点で予算に250万円、毎月の支払い額に3万円が上乗せされて当初の想定よりずいぶん高くなる。

 また、返済期間を35年も取れる人は20代の若い人だけだ。住宅金融支援機構によれば住宅を購入するボリュームゾーンは30代の方で、約半数を占める。定年前に返済を終えると考えれば返済期間は20~30年位が限度となる。まだ若い方ならば、ローン返済に関して退職金はあてにしないほうが良い。実際に貰えるかどうかという問題と、貰えたとしても60歳から65歳の空白期間(定年退職で収入が途絶えて年金も貰えない期間)で大部分が消えてしまう可能性が高いからだ。

 また、住宅・不動産情報のポータルサイトHOME'Sでも、一戸建て住宅を購入する人の平均年齢は36.9歳となっている。仮に購入者が35歳と考えれば返済期間は25年以下で考えた方が良い(20代で5000万円の家を買えるような高収入の方は滅多にいないだろう)。

 金利に関しても、変動金利はお勧め出来ない。現状では金利が下がる余地はほとんどないが、上がる余地はいくらでもある。当店のレッスンやセミナーでも「実際には金利が上がるかどうかははっきり言ってほとんど関係がない。金利が上がると返済ができなくなるようなプラン自体に問題がある」と、お客様には伝えている。金利変動の「リスク」を背負っているからこそ、低金利という「リターン」を得られている、という関係は忘れるべきではないだろう。

 結果的に超低金利の今ならば、全期間固定が現実的だ。2012年9月時点でフラット35の金利は最低水準で1.89%(返済期間21年以上の場合)となっている。フラット35Sエコやべーシックでさらに金利優遇を受けられるケースもあり、現在あえて変動金利で借りる理由はほとんど無い。

 このように考え直して、4750万円を金利1.89%で借りて25年間で返済する、という形でシミュレーションをやり直すと、毎月の返済額は19万8797円となる。ほかにも考慮すべき費用として団信保険料(返済者の死亡時にはローンが免除される保険の事)は25年で総額221万円ほどになる。月額あたりに直すと7400円程度だ(実際には借入残高に応じて変動するので、当初の負担額は重く、返済が進むほど負担は減る。今回は簡易的に計算)。

 返済額と団信保険料に上で説明した管理費・修繕積立金・固定資産税の3万円も加えれば、合計で約23.5万円と当初の想定額の2倍近くの金額となる(25年間の支払い総額は、ローン返済総額が約5963万円、頭金500万円、団信保険料が約221万円、月々の諸費用約900万円、合計で約7584万円)。

 これだけの返済を安心して行えるのは、教育費なども考えれば、35歳の時点で年収が1000万円を超えているような高給取りの方、あるいは世帯年収が1200万~1300万円程度のご家庭という事になる(旦那様800万~900万円、奥様400万~500万円で、奥様が出産等で収入が減る時期がある事も考慮)。

 こういった返済シミュレーションはウェブ上で簡単にできるサイトはあちこちにあるので、冒頭で紹介したようなしっかり勉強している人にとっては無理なローンであることは明白だ。

 とはいえ、借りられるかどうかだけを考えれば、年収が800万円程度、場合によっては600万円程度でも4500万円のローンを組むことは出来るかもしれない。変動金利ならば収入に占める返済額の割合を(金利が上がるまでは)低く抑えられるので、毎月12万円程度なら十分返せますよ、と住宅販売の営業マンに言われてしまえば心も動くだろう。

 このような状態で金利が大幅に上がってしまえば借り換えが出来ない可能性もある。収入に占める返済額の割合(返済負担率)が高過ぎると新たな借入先から見れば「借り過ぎ」という事になるからだ(借入れ可能な返済負担率の目安は高くても35%程度)。

 金利が上がったら借り換えれば良いと気楽に考えている方もいるが、実際には借り換えは必ずできるわけではない。借り換えであっても新規の借入れと同じように審査されるからだ。収入の下落、転職したばかり(あるいは失業中)、雇用形態、健康状態、担保となる家の価値の下落など、借り換えが出来ない理由はさまざまだ。つまり、借り換えを前提にせざるを得ない変動金利はハイリスクという事になる(あえてリスクを取りたい人、リスクの取れる人ならそれでも構わないが)。変動金利から固定金利への切り替えのタイミングも株式投資の売買のタイミングと同じくらい難しいと考えておいたほうがいい。

 返済が行き詰まって、なおかつ適切な処置を取らなければ任意売却や競売という形で家を失う事になる。ここまで追い詰められれば離婚に至る家庭も少なくない。家計の破綻は家庭の破綻にもつながるからだ。破綻までいかなくとも、無理なローンを組んだばかりに借金を返済するために生きているような状況になってしまえば、いったい何のために家を買ったのかという事になる。住宅購入は手段であって目的ではない。

 住宅の購入は家賃の前払いであって、それ以上でもそれ以下でもない。「せっかく買うのだから出来る限り良い家を・・・」という過剰な思い入れ捨てて、予算や借入額をシビアに見極める所からスタートするべきだろう。

中嶋 よしふみ(なかじま・よしふみ)
中嶋 よしふみ(なかじま・よしふみ)

 2011年4月にファイナンシャルプランナーのお店・シェアーズカフェを開業。ウェブ上では2012年2月に開設した「シェアーズカフェのブログ」がわずか半年で月間アクセス14万件を突破。FPとしては圧倒的なアクセス数を誇る。現在は日経マネー(ウェブ・メルマガ・本誌)、言論プラットフォーム・アゴラ、ブロゴス、ビジネスジャーナルにて執筆中。ヤフーニュースの個人カテゴリでオーサー(書き手)としても登録。対面では新婚カップルやファミリー世帯向けにプライベートレッスン・セミナー・相談等を行う。プライベートレッスンでは一日一組に限定、お客様ごとに最適化したレッスンと適切なアドバイスを組み合わせて高度なコンサルティングを提供中。他に無い独自のサービスがお客様の支持を得ている。

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