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住宅ローンを組む前に、「物価」について考える

2012.09.26

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 人が行動するには、必ずといって良いほど、その人の心を動かす何らかの理由がある。
 ここ数年で、「マイホームを買いたい」と考える人の最大の関心事は、「消費税が上がる前が得か」それとも、「住宅ローン控除の拡大が決まりそうだからもう少し待った方が得か」という、購入時期の問題だろう。
 マイホーム取得は、人生最大の買い物である。総額も大きいだけに、少しでも有利に、という気持ちはとてもよくわかる。
しかし、それだけで購入を決断しても本当に良いのだろうか?!

 まず、気になるのが、人生最大の買い物を、不安定な政権がカギを握る政策という外部要因だけで決めて良いのかという点だ。
 長期にわたり毎月返済を続けていく住宅ローンでは、無理のない返済計画を立てられる状況にある家計かという、自身の問題が最も重要である。金融機関から借りられる額と、実際に家計のなかで無理なく返済できる額は違うことを改めて認識する必要があるだろう。

 そしてもう1つ、住宅ローンを組むにあたり、見過ごされがちな視点がある。それは物価の動向だ。住宅ローンが借金であることは誰でも知っている。しかし、固定金利と変動金利のメリット・デメリット、この先の金利見通しなどには、関心を持って調べている人が多いが、これから数十年に渡って借金を背負う決断をするにあたって、物価の動向を気にする声はほとんど聞こえてこない。

 なぜ、住宅ローンを組む際に、物価の動向を意識する必要があるのかというと、物価が下がればお金の価値が上がるため、デフレ局面では、預貯金を持っている人は、実質的な価値が増すことになる。しかし、住宅ローンを抱える人には、住宅ローンの返済額が名目値で固定されるため、物価の下落によって実質的なローン負担を高めてしまう側面があるからだ。さすがに、これ以上、日本の物価が下がり続けると考える人は少数派かもしれない。ただ、今のようなマイルドなデフレが続けば、実質的なローン負担が高まる可能性を十分意識しておきたい。

 これからの日本が、インフレに向かうのか、デフレがまだ続くのかについては、名立たる専門家の間でも意見の分かれるところだ。ただ、デフレ進行などにより、巡り巡って家計にやってくる収入減の影響は、まだその過程にあるように思えてならない。物価の先行きについても、個人的には、物価の上昇と経済発展には密接な関わりがあることから、ノーベル経済学賞を受賞したことで有名な経済学者ポール・クルーグマン氏が、「インフレ急上昇は経済が停滞している限りどう考えても起こらない」と述べるように、デフレは現時点では長期化するのではないかとみている。

 一時的には、穀物や資源価格などの高騰によるコスト・プッシュ・インフレが起こる可能性も否定できないが、いわゆる需要に後押しされたディマンド・プル・インフレで想像するような収入の増加には繋がらないだろう。

 物価の先行きに対する判断は分かれるかもしれないが、もう日本に高度経済成長が来ることはないという点では一致する我々にとって、これからの住宅ローンを考えるとき共通の着眼点がある。

 それは、名目と実質をしっかり見極めること!

 私たちは、日常生活のなかでは、つい目に見える名目値だけで考えがちだが、住宅ローンのように長期に及ぶものほど、実質的な影響を考慮するべきではないだろうか。個人の頑張りとは別のところで、時代背景に振り回されないためにも、実質的な影響を理解しておきたい。

野尻 美江子(のじり・みえこ)
野尻 美江子(のじり・みえこ)

 有限会社ファイナンシャルリサーチ所属。マネー誌や女性誌、新聞、各種サイトへの執筆や取材協力、ラジオ出演などを通じて、“自分のお金と向き合うきっかけづくり”を提案。現在、ラジオNIKKEI『野尻美江子のマネー入門』(毎週火曜夜10時半~)に出演中

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