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モノ作りは死なず~町工場の逆襲が始まった

2012.08.20

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 日本を代表する「町工場の集積地」とうたわれる東京都大田区。この地に本社を構えるある中小メーカーの社長は、長年にわたって地場産業の興亡を見つめてきた。最近の状況について、「つるべ落としのように、町が沈んでいく」とため息混じりに語る。

 1980年代前半、大田区の工場数は9000を超えてピークに達し、町は活況を呈した。だが90年代初頭、バブル経済の崩壊で状況が一変。2008年には工場数が最盛期の約半分に、製品出荷額は半分以下まで落ち込んだ。追い打ちをかけるように、2008年秋のリーマンショックで大打撃を受ける。大田区の工場数は既に4000を割り込んでいる模様だ。町工場が次々と閉鎖され、マンションなどに変わっている。

 大田区だけではない。全国的にも工場数は減少している。経済産業省の調べによると、2000年から2010年までの10年間で3分の1の工場が消え、152万人の雇用が失われた。

 日本の製造業は長年、裾野の広い中小企業に下支えされてきた。大手メーカーからすれば、切削、溶接、めっき、鍛造、鋳造などの専門領域を持つ多種多様な選択肢の中から最適な企業を見いだし、仕事を発注できる体制が整っていた。その中小企業群がやせ衰えれば、日本のモノ作りは根底から弱体化する。

 大半の中小企業がギリギリのコストで経営しているところに、さらなる逆風が今、吹き荒れている。例えば東京電力は今年4月、企業向けの電気料金を値上げした。大量の電気を消費する鋳物製造業などからは悲鳴が上がっている。

 それだけではない。来年3月には「中小企業金融円滑化法」が期限切れを迎える。2009年末から借金返済を猶予することで、資金難に苦しむ中小企業を守ってきたが、猶予期間が終了すれば倒産が相次ぎそうだ。また、1ドル=70円台の「超円高」も、中小企業から容赦なく体力を奪う。実際、円高が原因で倒産した中小メーカーも出てきている。

 中小企業の生命線は、大手メーカーからの発注だ。だが、その生命線も先細ってきた。電機業界では大手メーカーが軒並み業績不振に陥り、大規模なリストラを進める。その一環で取り組む自社工場の縮小・閉鎖は、下請けの中小企業を干上がらせる。

 それでも、日本からモノ作りの灯が消えたわけではない。「産業の空洞化論」を真っ向から否定し、海外に活路を見いだそうとする企業が現れている。海外工場からの利益還元で国内の技術力が磨かれ、雇用も増えたという。逆説的だが、海外への生産シフトが日本のモノ作りを再生させるかもしれない。

 一方、国内で踏ん張り、最高益を更新する中小企業も少なくない。いずれも「脱・下請け」を実現し、大手メーカーにとって欠かせない存在となっている。低価格、短納期、ビジネスモデルの刷新、他企業との連合などが勝ち残りの道だ。

 国内の中小企業が壊滅すれば、大手企業も競争力を失う。こうした事態を避けるべく、自動車メーカーを軸に、日本のモノ作り再生に向けた真正面からの取り組みも東北で始まった。モノ作りは日本経済の生命線。その死守に向けた戦いが進む。

日経ビジネス 2012年8月20日号 より

日経ビジネス8月20日号特集
モノ作りは死なず~町工場の逆襲が始まった

中小製造業が日本再生のカギを握る。海外進出で雇用創出、フル自動化でアジアの人件費に勝る低コストを実現・・・。「モノ作り」で逆境から繰り出した経営革新に迫る。


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