「こんな制約が多い会場で、ネットをしっかり固定できるのか」。2年前、ロンドン五輪を主催するバレーボール関係者は一抹の不安を感じていた。

 一流のバレーボール選手が放つスパイクの衝撃に耐えるには、高強度でたわみにくい特殊な鋼管などを建物にがっちり固定したうえで、ネットを張ることが欠かせない。このため、主要大会で支柱を立てる際は、体育館などの床に穴を開けるのが一般的。そこに円筒状の金具を埋め込み、直径8cm弱の支柱を差し込み固定する。

 ところがロンドン五輪ではその方法が使えなかった。会場となる「アールズコート」は1937年竣工。コンサートや展示会も催される施設で、競技場ではない。ハコモノの建設を抑え環境に配慮するというロンドン五輪の方針もあって、何とか歴史的建築物に傷をつけずにバレー会場を設営するというのが主催者側に与えられた至上命題だった。

 そんな主催者の不安を一蹴したのが、バレーボールの支柱やネットを中心にスポーツ器具の製造を手がけるセノー(千葉県松戸市)だ。

 五輪に“初参加”したのは1964年の東京大会。以後、80年のモスクワを除く全大会で五輪の公式サプライヤーになり、今大会もボール以外のバレーボール用器具を提供する。五輪だけでなく、国際バレーボール連盟の主催試合ではセノー製がほぼ100%採用されており、同社の独壇場となっている。

 世界のバレーボール関係者から同社が認められている理由の1つは、支柱とネットの“施工力”。果たしてセノーはいかなる方法で、ロンドン五輪会場の難問を解決したのか――。

 バレーボールの支柱に限らず、競技用の設備からボールまで、五輪には日本の一流技術が数多く使われている。その中には、精度や耐久性で諸外国製を寄せつけないものも少なくない。採用されている道具・設備の品質と数なら、日本は確実にメダルラッシュだ。

 その意味で、4年に1度の「世界の祭典」は、単なる「アスリートの戦いの場」ではない。そこからは、「日本の技術の底力」や「日本の次のパートナー」、さらに「世界経済の潮流」も読み取ることができる。

 日経ビジネス7月23日号では、「ビジネスパーソンのための、もう一つの五輪観戦ノウハウ」を紹介した。

日経ビジネス 2012年7月23日号 より

日経ビジネス7月23日号特集『ビジネスに役立てる五輪ガイド』
日経ビジネスがロンドン五輪を徹底解説!
この技術、国、カネに注目せよ!

ビジネスパーソンたるもの日本代表の勝敗に一喜一憂するだけでは物足りない!五輪で日本の技術の底力を知り、次のパートナーを探し、世界の潮流を読む総力特集


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