ノーベル経済学賞を受賞した英国の経済学者リチャード・ヒックスは、「独占のよいところは平和なことだ(The best of all monopoly profits is a quiet life.)」と皮肉っている。

 独占市場であれば、倒産もなければ、解雇もない。利益も安定していれば、ライバルとの激しい競争もない。だから平和であるというのだ。

日本の電力システムをこのままの形で放置してよいのか

 もちろん、これは独占の弊害の本質を指摘したものだ。そのような独占状態が続くことで、国民に高い価格が押しつけられ、競争が生み出すイノベーションが挫かれ、そして非効率から生じる高い費用はすべて国民に押しつけられる。それでも独占経営が続くかぎりは、平和が続き、一般国民にはその独占の弊害が見えにくい。

 旧来の電力システムの問題点を考える上でも、この独占の弊害について考える必要がある。日本の電力料金は高すぎなかっただろうか。利益が保証されている電力会社の経営は効率的であっただろうか。再生エネルギー分野などでイノベーションを促すインセンティブは日本の電力システムの中にあっただろうか。

 こうした問題点は、電力の独占的供給という「平和」が続くかぎりは、見えにくい。しかし、原発事故などによって日本の電力システム全体に見直し論議が出てきた。原発再稼働をどうするのか、東京電力の経営改革をどう進めていくのか、今年の夏の電力不足にどう対応するのか、といった緊急性の高い問題を検討していくと、その先にはどうしてもより長期的な政策課題が浮かび上がってくる。日本の電力システムをこのままの形で放置してよいのか、という問題だ。

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