直感からイノベーションを生むには「映像化」して人と共有する
第24回 今から鍛えなおす「直感」(4)
ふだん、私たちが寝ている間に見る夢は、文章ではなく常に映像である。しかも単に見るだけではなく、その映像に身体ごと溶け込み、暑かったり寒かったり、泣いたり笑ったりといった感覚までパッケージになっている。ストーリーは概して支離滅裂だが、それはご愛嬌。人間は恐るべき映像化能力、ないしはバーチャルリアリティ能力を持っているわけだ。
夢だけではない。ちょっと心を鎮めて、国語の教科書にかならず載っていた三好達治の有名な詩「雪」を思い出していただきたい。
太郎を眠らせ、太郎の屋根に雪ふりつむ。
次郎を眠らせ、次郎の屋根に雪ふりつむ。
これを活字の文章として読むことは、むしろ難しいかもしれない。たった2行ながら、誰でも読んだ瞬間、頭の中に雪深い静寂な光景が広がるだろう。ある人にとっては自分の懐かしい故郷かもしれないし、またある人にとってはどこかで見た白川郷の合掌造りの冬景色かもしれない。あるいは本人も驚くような、まったくオリジナルの映像が浮かぶ人もいるだろう。
いずれにせよ、蒸し暑く騒々しい昨今に、一瞬の清涼感と寂寥感すらもたらしてくれる。こういう詩をつくる才能もさることながら、それを読んで即座に映像化できる人間の能力もすばらしい。これも「直感」の一種である。
注)このコラムは2007年12月から2008年12月まで連載した「齋藤孝の『3分間』アカデミー」を再編集して掲載したものです。初出は2008年6月20日です。記事の内容は、執筆時点の情報に基づいています。





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