「六重苦」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。円高、高い法人税、電力不足…。日本企業を苦しめ、競争力を奪う元凶は一般にこんな負担だとされています。だが、それだけでしょうか。「日経ビジネス」は今回、日本とライバルの韓国、米国の主要企業を徹底的に財務分析してみました。資産効率や利益率、投資効率など、日米韓の企業には大きな違いがあります。この違いをもたらしたのは何か。巷間言われている六重苦がその原因なのか、それとも違うのか。数字から六重苦を検証しようという試みです。
その分析から最初に見えてきたのが、税・社会保障と為替、そして物流費など企業の外部に存在する負担の違いでした。例えば税制。日米の法人税率は約40%と世界でも最も高い水準にあるのに対して韓国のそれは24.2%です。しかも、韓国の場合は、法人税を減免する様々な税額控除が認められ実際の法人税負担率はさらに低くなっています。年金や健康保険などの保険料の企業負担率も韓国はおおむね日本より3〜4割低くなっています。
もちろん円高の影響も甚大なものです。建機メーカーのコマツの場合、最高益を達成した2007年上期と今年上期を比較すると、主力の建機・車両部門で、円高によってセグメント利益のほとんどが吹き飛ばされています。
ただし、日本企業が苦境にある理由は、こうした外部要因だけではありません。分析から見えてきた本当の六重苦には、企業自身が抱える問題もありました。「新興国で弱く」「投資効率も低迷」し、「雇用の硬直化」という企業内部の「三重苦」が競争力を弱めているのです。
新興国の市場が急拡大しているのは言うまでもありません。例えば日本の基幹産業である自動車では、その市場規模が世界の半分近くになり、先進国を凌駕し始めています。それに伴い、自動車市場では構造的な大変化が起こっています。新興市場の競争のポイントが「低価格」なのはいうまでもありませんが、先進国市場も「価格」が重要なキーワードになってきたのです。
日本企業が差異化のカギにしてきた品質と機能は、ほぼ市場の要求水準に達し、同じ品質・機能でより低価格なものに目が向き始めたのです。日本企業はこの大きな変化についていけなくなりつつあります。それが新興国でのシェアの低さであり、低価格品に重心がある現代自とトヨタの粗利益率の差などに現れています。
投資効率も大きな差があります。日本企業がことにここ10年はリストラに追われたせいかもしれませんが、減損や評価損が非常に大きく、韓国企業とはここでも大きな差がついています。
また、社員の平均年齢を見れば、サムスンが32歳なのに対し、パナソニックは44.6歳。サムスンの「若さ」は、「40代で退社するのが珍しくない」韓国大企業の雇用“慣行”の結果ですが、パナソニックは日本の平均的な水準だとすれば、この違いは活力の差にもなりかねません。
韓国の仕組みがすべていいわけではありません。しかし、日本はあらゆる部分で高コストになる構造ができあがっており、この仕組みの中にいたままでは、競争力を保つのは難しくなりつつあります。特集では、日本の高コスト構造を抜け出し、独自のモノ作り、販売の仕組みを作り上げたエルピーダメモリ、パナソニックの例も紹介しています。日本が抱える構造問題とともに、解決への道筋もお読みください。
日経ビジネス 2011年11月28日号より
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