「TPPの議論で思うことがある。貿易技術立国でここまで発展してきた日本にとってTPPが国益を損なうとしたら日本は何をしたいのか。議論の順序として環太平洋のTPP参加の前に、アジアの国々とのFTA・EPAを先行しろという議論なら分かる。だが、そんな国家戦略を描いて、日本がアジアをリードしているわけでもない。この国はいったいどこに向かって行きたいのだろうか」
コマツの坂根会長からメッセージ
こんな書き出しで始まる文章がコマツの坂根正弘会長から送られてきた。私個人に送られてものではなく、コピーされているところをみると、複数のメディア関係者に宛てて発信されたメッセージであることが分かる。
現地時間の11月12〜13日にホノルルで開催されたAPEC首脳会議で、野田首相がTPPへの交渉参加表明をする直前に郵送されてきたものだ。今や日本を代表するグローバル企業となったコマツの経営者は、農業界や日本医師会などの規制業種からあがるTPP絶対反対の声に押され、通商国家日本の未来図をいっこうに語ろうとしない政治家たちに業を煮やしているのだろう。
日本のTPP論議には重大な視点が欠落している。先進国から新興国へと世界経済の成長エンジンが劇的に転換した時代にふさわしい新たな通商ルールを確立しなければならないのが世界の現実。それに対して日本人はあまりにも鈍感だ。世界貿易機関(WTO)が農業問題で機能不全に陥った後、FTAやEPAなど勝手きままに2国間での自由化交渉が活発になっていった。事実上、WTOが空洞化したのだ。
TPPはそれに嫌気がさしたシンガポールが近隣諸国に声をかけたのが始まり。そこに米国が乗ってきたことで一躍注目を浴びた。日本では米国の陰謀論を心配する声も少なくないが、TPP問題の本質は21世紀の新しい自由貿易のルールを決めることに尽きる。
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