世界の流れと逆に、急激な人口減少期を迎えた日本の未来を考える本企画。第3回はヒトを含むあらゆる動物の行動生態、特に繁殖戦略や配偶者選択を研究してきた総合研究大学院大学教授の長谷川眞理子氏に話を聞いた。70億というヒトの数や生態は、動物の世界から見るとどんなふうに感じられるのだろうか?(インタビュー、文=福光恵)
上限を40倍も超えてしまった「ヒト」
「ほかの動物から見たら、きわめて異常な現象だと思います。いえ、人間という生き物が、そこまで変わった行動をするという意味で、ですよね」
1952年東京生まれ。総合研究大学院大学教授。専門は動物行動学、行動生態学。タンザニアでチンパンジー、伊豆でクジャクの繁殖戦略や配偶者選択を調査、現在は動物からヒトまで幅広く行動生態を研究している。著書に『生き物をめぐる4つの「なぜ」』『進化生物学への道』『進化とはなんだろうか』『オスとメス 性の不思議』『クジャクの雄はなぜ美しい?』『雄と雌の数をめぐる不思議』『動物の生存戦略』など。
総合研究大学院大学教授で、ヒトを含む動物の行動、生態、進化などを研究する長谷川眞理子さんは、まもなく70億人にも達する「ヒトの個体数」についてそう話す。
人口が激増する地球。一方で少子化が進み、先進国の先陣を切って、人口減少社会に突入しようとしている日本。こうした現状は、人類学や行動生態学という科学の視点から、どのようにとらえられているのか?
今年1年にわたって連載されているナショナル ジオグラフィック本誌「70億人の地球」と連動して、日本の人口問題にスポットを当てる本シリーズ(特設ページはこちら)。第3回は、人類学者で行動生態学者の長谷川眞理子さんとともに、地球そして日本の人口問題を探っていく。
ここで再び、長谷川さんの話に耳を傾けてみよう。70億人にまで膨れ上がった人口を「きわめて異常な現象」と長谷川さんが語るのには、いくつかの理由がある。
「そのひとつは、ポピュレーションサイズの上限から、ヒトだけは突出して多く存在していることですね」
ポピュレーションサイズとは、地球上の生物それぞれの個体数のこと。その生物の体の大きさや、自然界に存在するその生物の食料の総量などから、1平方キロメートルあたりの個体数の上限を算出することができる。生物学の言葉では、キャリングキャパシティ(環境収容数)とも呼ばれる。
「これで言うと、平均体重65kgのヒトの場合は1平方キロ当たり、わずか1.2〜1.4人が上限。実際に、ナミビアで暮らすクンという狩猟採集民は、現在も平方キロ当たり1.2人という人口密度をキープしている。ところが世界の平均では1平方キロ当たり44人ものヒトが暮らしています。上限を40倍もオーバーしているんですね。こんな生物、ほかにはいません」
バックナンバー
- 第4回 「日本人と結婚」 山田昌弘(社会学者)(2011年11月09日)
- 第2回 「日本が乗り越えてきた4つの人口の波」 鬼頭宏(歴史人口学者)(2011年10月26日)
- 第1回 「人口急変で日本は混乱の時代に」 石弘之(環境問題研究者)(2011年10月19日)
















