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今週の日経ビジネスはこう読め!ビジネス

ニッポンの稼げる技術100

2011.10.11

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 日本企業はここ数年、「高水準の研究開発費を投じている割には、それを収益に結び付けることができていない」と言われてきた。

 みずほ総合研究所は昨年9月、日本の「研究開発効率」(=過去4年間の付加価値/8年前から6年前までの累積研究開発支出)がここ数年、米国やドイツに比べ2~3割下回っているとの調査結果を公表。日本の「技術で儲ける力」の衰えを指摘した。

 実際、日本企業の研究開発には今、さまざまな問題点が指摘されている。

 「海外の消費者のニーズを捉え切れていない」「ネットワーク型製品の創造力が低い」「欧米企業に比べデザイン力に劣る」などだ。だが、「革新的なテクノロジーを生み出す力」が消えたわけではない。競争力に陰りが見え始めた分野もある一方で、新しい技術は着実に育っている。

 例えば、超電導ケーブルはその1つだ。

 読者の皆さんは覚えているだろうか。1980年代後半の「超電導ブーム」を。電線の電気抵抗をゼロにして送電ロスを防ぐ新技術として、多くの企業が参入した。しかし、技術的ハードルの高さに開発を断念する企業が続出。ブームは瞬く間に過ぎ去った。

 その「夢の技術」を参入から40年、地道に研究し続け、ついに工業製品として量産化に持ち込んだ企業が日本にある。住友電気工業だ。

 超電導ケーブルの技術開発と生産で世界をリードする同社の大阪製作所。米国や中国など世界中から受注が舞い込み、年産500キロメートルの生産能力を2倍に拡大しようとしている。オランダで超電導現象が確認されてから100年。超電導・エネルギー技術開発部の林和彦・応用開発部長は「今年は超電導技術の事業化元年」と話す。

 その研究開発は撤退と隣り合わせだった。経営会議で現状を報告すると「超電導は会議室から出て行け」と言われ、開発チームは誰でも一度は「会社を辞めろ」との言葉を浴びたという。

 それでも諦めることなく、素材の組み合わせと生産方法の研究を進めた結果、2003年、転機が訪れる。不純物が極めて少ない超電導線の製造を可能にする成法を開発したのだ。新製法の導入以降、電流量は飛躍的に伸び、一気に実用化へのメドが立った。

 応用範囲は無限だ。発電所からの送電ケーブルに使えば、送電中の損失が半減する。少ないスペースで大容量の電流を流せるため、土地の有効活用にもつながる。小型で高出力の超電導モーターは船舶や電気自動車の性能を大幅に向上させ、MRI(磁気共鳴画像化装置)の小型化が進む。当面の市場規模は2兆~3兆円と想定されるが、用途開発が進めばその規模がさらに膨らむのは間違いない。

 「社内のだれも計算できない」(林部長)という膨大な開発投資をまとめて回収する日が近づいている。

 日本企業の研究開発にとって、この10年は「衰退」ではなく、「助走」の期間――。そんな期待を抱かせる新技術はまだまだある。

 絶対に交通事故を起こさない車、藻を活用したバイオ燃料の量産、念じるだけでロボットや機械を操れる装置……。世界が欲しがる日本の知恵を埋もらせることなく「稼げる技術」に変えれば、この国は再び輝きを取り戻す。

日経ビジネス 2011年10月10日号より

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