いま日本はグローバリズムの中で力を失い元気がない。僕もそうした日本の現状に危機感を持っている。Googleのような世界を目指すというのも1つの考え方なのだろうが、それとは別に自分たちが持っている世界の足元を掘り下げるというやり方もあると思う。

 歌舞伎のような日本的なものを掘り下げていくと、そこから意外と世界に通じるものがある。市川海老蔵さんのお話から、日本と世界の関係を考えたときに、僕は小津安二郎の映画を思い出した。小津は日本の映画監督の中で世界的に最も評価が高い。あんなに日本的な世界を描いているのに世界と通じている。

 海老蔵さんの歌舞伎にもそういうところがある。海老蔵さんは一切他人のことを気にしないという。自分たちの培ってきた美意識をただ掘り下げているだけで、そこにはグローバリズムもなにもない。しかしそれが世界に通じてしまうのだとすると、そこに日本人の生き方の重大なヒントがある。

 特に「型」。型というのは日本人が持っている独特なやり方であり、それはものづくりなどにもあてはまる。もう1つは「かぶく」という精神である。今よりもいろいろな意味ではるかに社会の縛りが厳しかった江戸時代、七代目・市川団十郎は「かぶく」精神を貫いたために江戸から追放されたと言う。「型」と「かぶく精神」。この2つが歌舞伎が持っているすごい力だと思う。海老蔵さんはまさにそれを体現している。