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幼児化する大人たち『一億総ガキ社会』(1/2ページ)

2010.08.06

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(NPO連想出版 新書マップ編集部 川井 龍介)

 日本が一億総中流社会といわれたのは、高度経済成長期のことだった。ほとんどの人が自分は社会のなかで中流である、と自認した時代である。この言葉はいまや死語になろうとしているが、昨今の日本を、この言葉になぞらえて表現するなら、大人になれない人間たちが大量出現している社会、というのが本書のタイトルの示す意味だ。

 精神科医であり大学で教鞭をとる著者は、臨床経験や精神分析学、また昨今の日本の若者をめぐる諸分析をもとに、いつまでたっても“ガキ”のままの人間がどうしてこれほど登場したのか、そこから脱却するにはどうしたらいいのかを考察する。

 引きこもり、モンスターペアレントといった人たちに象徴される人間像を著者は、“ガキ”というのだが、彼らに共通するのは、自己愛が強く、傷つくのを恐れ、成熟を拒否するところだ。

 進学、就職に失敗したり、異性にふられたり、あるいは会社で上司にしかられたりと、自分の思ったとおりにならないことがあると、すぐに傷つき、それ以上傷つくのを恐れ自分の殻に閉じこもったり、逆にうまくいかないことを他人のせいにする。

 この背後には、乳離れできていない母子関係があるという。自分とわが子を一体化して、コントロールしたいと願ったり、子供の可能性や子供の挫折を自身のものと同一視してしまう母親は、子どもが失敗することを恐れる。そして、親子とも失敗に正面から向かい合えなくなったり、何かを断念することをうまく受け入れられないという。

 こうした成熟拒否の若者が増えていることに対して、著者は、 「大人になるというのは、『なんでもできるようになること』ではなく、むしろ「何でもできるわけではないということを受け入れていく」過程だからである。幼児的な万能感をひきずり、自己愛的イメージにしがみついたまま、現実の自分と向き合うことができないのは、まさに子どものまま、ガキのまま、なのである」と診断する。

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