企業のTwitterアカウント開設が進むに従い、その運用や活用方法に悩む“中の人”が増えてきた。ソーシャルメディアを通じたマーケティング支援を手掛けるアジャイルメディア・ネットワーク代表取締役の徳力基彦氏に聞いた。
(聞き手:日経ネットマーケティング 小林直樹)
2009年の秋以降、企業の公式Twitterアカウント開設ラッシュが続いているが、一方で関心を持ちながら開設に踏み切れなかったり、運用に迷いが生じていたりする企業も見受けられる。
米デルのアウトレットのTwitterアカウント(@DellOutlet)が開設から2年半で累計650万ドル(約6億5000万円)を売り上げた話や、テーブルマークのカトキチアカウントが人気になっているといった成功事例がメディアで取り上げられると、それらが基準になって、Twitter活用に二の足を踏んだり、成果を上司に求められて担当者が困惑したりするケースが出てくる。
だが、デルの場合は150万を超えるフォロワーがいてこそ実現できている売り上げであり、日本ではフォロワー数が多いユニクロでも6万フォロワーという水準を考えると、まだ米国並みの販促効果を期待するのは無理がある。
また日本では、面白いつぶやきや当意即妙なリプライなどTwitterアカウントから発せられる内容に注目が集まりがちだが、企業にとってTwitterを活用する魅力は、発信以前に、よく聞く=“傾聴”に最適なツールであること。よく聞いているからこそよくつぶやける。発信ばかりに気を取られ、ソーシャルメディアとマスメディアの根本的な違いを認識せずにタダで使える宣伝媒体ととらえて一方的に発信すると、失敗につながりやすい。
顧客の声は専門部署で既に十分聞いているはずだが……。
アンケート回答やサポートセンターへの電話といった従来型の方法は、ユーザーにとってハードルが高い。Twitterなら、ユーザーの本音がブログやクチコミ情報サイトと比べてよりリアルタイムに出てくる。これは企業にとって非常に貴重な情報源になる。
企業のソーシャルメディア活用のバイブルとでも言うべき書籍「グランズウェル」では、ソーシャルメディアを活用する上での5つの戦略として、顧客理解を深めるための「傾聴戦略(Listen)」が1番目に出てくる。
ソーシャルメディアで交わされる会話に耳を傾ければ、自社および商品ブランドが顧客にとってどういう存在かを知ることができ、話題を波及させているキーパーソンも見えてくる。いかにソーシャルメディア上の会話を聴くか。そして聞きっぱなしではなく、その声を速やかに関係部署で共有し改善につなげる社内スキームを組めるかどうかが、企業がソーシャルメディアを活用する上で重要なテーマと言えるだろう。
国内で注目している企業アカウントは?
先ほどの米デルについて、書籍「ビジネス・ツイッター」には、同社がTwitter普及初期の2007年ごろから「無言で観察」する手法に取り組んでいたことが書かれている。日本法人(@DellConsumer_JP)は本国主導ではなく独自の方針で立ち上げ、顧客サポートに熱心に取り組んだ結果、製品紹介ツイートにフォロワーの1割がサイトアクセスしているのは興味深い。
東急ハンズのアカウント(@TokyuHands)は、発言を一通り見てみると、Twitterユーザーが同アカウントに向けて話しかけたのではなく、独り言としてつぶやいた同社関連コメントに対して、コミュニケーションをとっていることが分かる。これはアカウント運営者が常に「東急ハンズ」などで検索し、“傾聴”しているからできることだ。
最近、bot(自動投稿)を活用したキャンペーンが目立つ。今年2月にUCC上島珈琲がキャンペーンの告知宣伝をbotで発信して反発を招いたことから、botを悪者扱いする見方が一部にあるが、それはやや短絡的。東急ハンズの在庫が分かる「コレカモネット」(@korekamo)はbotがクチコミを波及させる原動力になっているし、ファミリーマートの「ファミマなう」(@famima_now)は、2009年12月のアカウント開設当初、「ファミチキなう」というつぶやきに対して自動的にbotが話しかける機能を実装して、フォロワーを増やした。
7月13日の「NETMarketing Forum 2010」で、「ザ・傾聴マーケティング 〜 ヒットの種はソーシャルメディア上にあり」と題し、東急ハンズ、デル、ファミリーマートのTwitter管理者をパネリストに招いてパネルディスカッションを実施する。運営ポリシーや組織体制、Twitter上の声の社内活用、運営上のエピソードなどを尋ねて、討議したいと考えている。
同セッションの受講申し込みは終了しましたが、そのほか「Facebook」や、「iPhone」「Android」端末などのスマートフォン、新世代仮想空間サービス「アメーバピグ」などの最新動向、活用事例を学べる特別セミナー「デジタルネイティブ世代をつかまえる『つながりマーケティング』4つの新潮流」なども開催します。お申し込み、詳しい情報はこちらから。
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