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真壁昭夫「“100年に一度”時代のお金の貯め方・殖やし方」ビジネス

ユーロが消滅する日(2/2ページ)

2010.05.25

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 ギリシャの財政懸念に端を発した「連鎖デフォルト」に対する緊急対策として、IMF(国際通貨基金)とEUは協調体制を組みました。先ず、ギリシャに1100億ユーロ(約13兆円)の支援枠を設定し、既に支援の一部は実行しています。また、ユーロ圏諸国の支援策として、総額7500億ユーロ(約89兆円)の資金枠を設けました。さらに、ECB(欧州中央銀行)は、ギリシャやポルトガル等の信用力低下に歯止めを掛けることを狙って、それらの国債の購入を開始したようです。

 しかし、これらはいずれも緊急対策であり、中・長期的に、財政の悪化に苦しむ南欧諸国が抱える問題を根本的に解決するものではありません。ギリシャには既に支援資金が投入されていますが、この資金はギリシャが借りるのであって、金利負担や元金返済の必要があります。

 ギリシャは当面の資金繰りの目処は付きますが、返済のためにさらに財政を切り詰めて、返済原資をひねり出さなければなりません。ギリシャが、公務員給与や年金支給額を減らして、多額の財政削減をその痛みに耐えられるかどうか、専門家の間でも疑問符を付ける見方が多いのです。

 また、ECBが行った南欧諸国の国債の買い入れは、人為的に国債の流通利回りを低下することになるため、モラルハザードが発生することが懸念されます。政策的にモラルハザードを作ることが市場の機能を歪め、それが中・長期的に、南欧諸国の財政状況の改善を遅らせることも懸念されます。結果的に、財政悪化の一段の拡大やインフレ懸念の台頭など、より大きな問題の種をまくことにもなりかねないでしょう。

 そう考えると、今回の緊急対策は、将来的に、世界経済にさらに大きな問題をもたらす懸念があります。ユーロ防衛の前途は多難と見るべきです。そうなると、ユーロ問題が、世界経済に与えるマイナスの影響、さらには金融市場にもたらす懸念は、これからも続く可能性は高いと考えた方がよいと思います。最悪のケースでは、一部の経済専門家が指摘するように、ユーロが消滅する日がやって来るかもしれません。

真壁 昭夫(まかべ・あきお)
真壁 昭夫(まかべ・あきお)

 1953年生まれ。1976年に一橋大学商学部卒業し、第一勧業銀行に入行。ロンドン大学経営学部大学院(修士)卒業。メリル・リンチ社ニューヨーク本社出向、みずほ総合研究所調査本部主席研究員などを経て、信州大学経済学部教授(現職)。著書は、『実戦 行動ファイナンス入門』(アスキー新書)、『ゼロから分かる個人投資』(講談社現代新書)、『下流にならない生き方』(講談社 α新書)など多数。

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