「知る楽 仕事学のすすめ」(NHK教育テレビ)は、毎回仕事の達人にスポットを当て、成功の秘けつや、ノウハウ、理念を語ってもらう番組だ。今月は、町工場経営・岡野雅行さんの「ものづくり術」に迫る。今回のテーマは「人との出会いで仕事を育め」だ。
ハイテク部品を量産するプラントを次々と生み出してきた岡野雅行さん。今回は、岡野さんの修業時代に迫る。

岡野氏
岡野さんは5年前、直径わずか0.2mmの“痛くない注射針”の量産化に成功し、多くの賞賛を浴びてきた。
世界中の企業をひきつける岡野さんの強みは、10年を越える修業時代の間に、金属加工の多種多様な技術をマスターしたこと。
オンリーワンと言われる岡野さんの技術力は、学校ではなく、下町の人々との出会いから育まれた。
一流の金型職人だった父親。近所の遊郭で出会った、夜の街の人々。幼い頃から身に付けた世渡り力が、岡野さんを進化させてきたのだ。
第二の学校
墨田区・東向島。岡野さんの工場はこの下町で、父の代から80年以上続いている。岡野さんが工場前の道を指してこう語る。
「ここの通りの前、川なの。これだけの幅で川だったの。曳舟川っていうきれいな川。ここで泳いだんだもの」
近くに橋(今は歩道橋)があり名前が更正橋という。藤巻氏がその意味を尋ねると岡野さんは……。
「これは、この通りの裏に昔、玉の井という遊郭があった。有名な『墨東綺譚』(永井荷風)に出てくる。だから帰りはね、悪いことばっかりしたから、そこ渡るときは更正して渡れと……。この辺はね、街工場の固まりだったの」
かつて町工場地帯と色街が隣り合っていた向島。子供時代の岡野さんにとって、そこは世渡り力を学ぶ、またとない学校だった。




