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茂木健一郎の「超一流の仕事脳」

大きなものに向き合うために
組織を超えて助け合う

山岳警備・山田智敏

 今回お話を伺った山田智敏さんは、富山県警山岳警備隊で山岳救助の最前線で活躍されている。山田さんは仕事をする上で注意力やモチベーションの「継続」ということが大事だとおっしゃっていた。山では一瞬でも気の迷いや緩みがあればすぐに命取りになってしまう。言葉を交わすうちに、その静かな決意が強く伝わってきて、その安定ぶりが信頼につながっているのだと感じた。

 また、救助の現場において常にいろいろなところに目を向けていて、その上で周辺視野で状況の全体をとらえている。例えば斜面の途中で救助活動を行う際にはさまざまにロープを組み合わせて山を降りるのだが、組み上げたシステムに1カ所でも破綻があればも命にかかわる。自分が降りる足元だけでなく、落石が来るほうにも注意を払わなければならない。

 周辺視野で物事をとらえるという問題は、さまざまな分野のプロフェッショナルに繰り返し登場してくる。セレンディピティー(serendipity/偶然の幸運に出会うこと)を育み新たな発想を生み出す創造性にも関わるし、トラブルを未然に防ぐという意味でも重要な問題である。それぞれの職業でそれぞれの脳が発達していくものだと思うが、特に山岳警備の仕事で周辺視野を見る能力が育まれていることを知った。

 山では何かトラブルがあったとき、人と人が立場や組織を超えて助けあう。それは「山」という大きなものに向き合っているからだが、“大きなもの”は山だけではない。それはマーケットかもしれないし、業務上の壁かもしれない。山田さんのお話を伺うと、そうしたものに向き合ったときにみんなが助け合うという原点を思い起こしたし、その背後には謙虚さがあることが大事なのだと感じた。

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