(松浦晋也=ノンフィクション・ライター)
前回の記事から大分時間が経ってしまった。その間のアメリカにおける報道によると、どうやらオバマ米大統領は「フレキシブル・パス」を採用する意志を固めたようだ。正式には2010年1月27日(日本時間28日)の大統領一般教書演説で、「オバマ新宇宙政策」が発表されるとの見方が有力である。
フレキシブル・パスは、米有人宇宙飛行計画審査委員会(Review of U.S. Human Spaceflight Plans Committee:通称オーガスチン委員会)が、公表した報告書「Seeking a Human Space Flight Program Worthy of a Great Nation(偉大な国家に相応しい有人宇宙飛行計画を求めて)」に掲載された、現在の有人月探査計画に対する代替案だ。
有人月探査の実現時期を延期し、発生する余力を使って、ラグランジェ点、地球近傍小惑星、さらには火星の衛星であるフォボス/ダイモスなど、月よりも遠い様々な場所への有人飛行を実施するというというものである。詳細は前回の記事で解説した。
オバマ大統領がフレキシブル・パスに基づく自らの宇宙政策を打ち出すならば、2004年1月にブッシュ前大統領が打ち出した新宇宙政策、通称ブッシュプランは6年目にして大幅な方針変更を受け、事実上終息することになる。
その背景には、強まる中国の存在感がある。フレキシブル・パスには対中国シフトという意味合いもあるのだ。オバマ大統領が「フレキシブル・パス」を採用するならば、それは、アメリカが「今のままではどんなにうまくいったとしても、中国と有人月着陸の実施を競うことになる」という自己認識に至ったことを意味する。
アメリカはどこと比べて「偉大な国家」でありたいのか
オーガスチン委員会が、フレキシブル・パスを提案した背景には、「アメリカを世界第一の宇宙国家として維持するにはどうしたらいいか」という問題意識があった。そのことは報告書の題名「偉大な国家に相応しい有人宇宙飛行計画を求めて」を見ても明らかである。
ここで問題なのは、「アメリカが、どの国と比べて偉大な国家でありたいのか」ということだ。オーガスチン委員会が、有人月探査を目的としたブッシュ新宇宙政策の見直しを目的としていたことから、アメリカが比較対象とする国は、有人月探査に興味を持つ国以外ありえない。すなわち、独自の有人宇宙ステーション計画や有人月探査の構想を打ち出し、一歩ずつじりじりと技術開発を進めている中国である。
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