今回お話を伺った浅川智恵子さんは、コンピュータで扱われる情報を音声の形に変換し、視覚障がいを持つ人や文字を読めない人にも利用できるようにするソフトウエアやシステムを開発されている研究者だ。ご自身が14歳の時に視力を失って、大変な苦労を乗り越えて大きなテーマに挑戦し続けている。
英語では障がい者の方のことを「チャレンジド」という表現をするが、障がい者の方だけでなく、人間全体がそういう立場に置かれている。人間の脳にとってチャレンジすることは、何物にも替え難い喜びでもある。目が見えないことは大変なハンディキャップである。しかし、目が見えないからこそ挑戦できることがたくさんあり、それを見つけたときに浅川さんの人生は開けたのだと思う。浅川さんは盲学校から大学の英文科へ進み、さらに職業訓練学校でコンピュータを学ばれた。その後、研修生として日本IBMへ入るのだが、その一連の過程で常に難しいほうを選びながら生きてきたとおっしゃっていた。これもまた深い言葉だと思う。
浅川さんが自分の人生の道を見つけた瞬間は、同僚からの「それ面白いよ」という一言だった。自分の行く道が見えたというのは、これから10年、20年、さらに一生挑戦し続けられる課題が見えたということだ。これは「プロフェッショナル」という番組をやってきて感じていることでもあるのだが、職業人として一人前というか自分のスタイルを見つけたということになるのだと思う。それが分からないで苦労している人は多いのではないだろうか。
特に日進月歩のITの世界では、研究テーマとしても射程距離の短いものが多いなか、10年かかって実現するかどうかといったテーマは見つけにくい。浅川さんが目指しているさまざまな人にアクセス可能なインターネットを作るというのは、果てしないチャレンジだと思う。




