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新聞のネット進出が苦戦続きなのはなぜか(1/14ページ)

2009.12.22

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(山本一郎=イレギュラーズアンドパートナーズ代表取締役)

死屍累々の米国のネット進出事例

 アメリカでは、新聞社の売上が漸減し利益体質が磨耗する現象が、出版業界と同じく2003年ごろから表面化しており、各社さまざまな経営努力を払って失いつつある紙媒体の威光と利益率を保とうと躍起になっていた。何より、新聞を発行し続けることは装置産業であり、製造業と構造を等しくしているため、このシステムを維持するには規模と利益が必要なのである。

 西海岸に本拠地を置くある新聞社は、新聞記事読者をネットに奪われ始めている現状に危機感を抱き、1997年に他社に先駆けて新聞記事を丸ごとネット上で閲覧できるようにし、そこに個人情報を入れさせ課金をする形で紙からネットに事業構造をシフトさせようとした。その後、これらの動きを見た多くの新聞社は、同様の手段を使って公式ウェブサイトを作り、そこに自社の新聞記事を掲載しコラムを載せ、新聞を買ってくれない読者にも自社の記事がリーチするような構造を作り上げた。決して少なくない金額の投資ではあったが、結果だけで言うならば、これらの試みはすべて失敗に終わり、ただ赤字を積み上げるだけの結果に終わっている。

 新聞事業の低迷を見越して、その新聞事業で培った強みを活かして新規進出しようとした事業が赤字のまま浮上することができず、ただでさえ細った体力を新規事業の失敗で削ってしまうという悪循環は、経営危機に陥ったアメリカの新聞社各社に共通して見られる。穿った見方をすれば、ネット時代が到来し、新聞の読者がネットに奪われているので、競ってウェブに進出して情報をネットで提供したが、そのコストをまかなうための広告事業すら黒字に転換せず、逆にウェブで見られるがゆえに有償読者離れを促進してしまい、やればやっただけ赤字を垂れ流す構造である。

 ネットで利益を上げられ得るという甘い見通しに立った事業計画を元に、ネットへ参入する既存メディアは後を絶たない。だが、IT業界はスピード勝負だ、という幻想に駆られて危機感を抱き、楽観的な事業計画で進出する企業を待ち受ける現実は厳しい。

 これでは何のために環境に適応しようとしたのか分からない。手を打ち、できる限りのことをやろうとしたにもかかわらず、手を打つほどに展開するコストがかさみ、保有するキャッシュを食い潰し、結果として身売り、破綻に追い込まれる新聞社に共通しているのは、情報の無料化に伴う顧客離れである。

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