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時評コラム

猪瀬直樹の「眼からウロコ」

安易な事業仕分けが周産期医療の悲劇を招く

「無実の事業」も断罪される、まるで「紅衛兵」

 事業仕分けの様子を見て、「まるで紅衛兵だ」という印象を受けた。このままのやり方なら仕分け人は、主計局の紅衛兵である。中国の文化大革命では、無実の人たちが断罪された。事業仕分けの対象事業のなかには、たしかにムダな事業もあるけれども、無実の事業もたくさん含まれている。それらを一緒くたにして、1時間の即決人民裁判で断罪していくのだから、これは民主主義の否定である。

 民主党のマニフェストは子ども手当の予算2兆7000億円を計上するという。そのために周産期医療という緊急事態のためのわずかな予算を削るのは、少子化対策として大きな矛盾である。子どもを産む妊婦は、周産期医療に不安を感じている。

 本場イギリスのマニフェストは、時間をかけて党内の合意を形成し、まとめられている。民主党のマニフェストは、選挙直前の7月に、数人でつくられたものだ。正当性が疑わしいマニフェストに振り回されるのではなく、国民の不安を取り除くことに力を注いでもらいたい。

 これは東京都だけの問題ではなく、他県の周産期医療にもかかわる問題である。安易な事業仕分けが周産期医療の悲劇を招く。また事件が起きたら、どう責任をとるのか。

猪瀬直樹(いのせ・なおき)
作家。1946年、長野県生まれ。1987年『ミカドの肖像』で第18回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。『日本国の研究』で1996年度文藝春秋読者賞受賞。以降、特殊法人などの廃止・民営化に取り組み、2002年6月末、小泉首相より道路関係四公団民営化推進委員会委員に任命される。政府税制調査会委員、東京工業大学特任教授、テレビ・ラジオ番組のコメンテーターなど幅広い領域で活躍中。東京都副知事。最新刊に『ジミーの誕生日 アメリカが天皇明仁に刻んだ「死の暗号」』(文藝春秋社)がある。
オフィシャルホームページ:http://inose.gr.jp/
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