この区分では、NASA予算を2010会計年度の計画から増やさない。2種類の素案を検討している。
ブッシュ前政権が策定した有人月探査計画をそのまま進める。2010年とされているスペースシャトルの引退は、計画遅れのために2011年となり、ISS運用終了もそれにつれ て2016年になる。
オプション2:ISS+月探査。
「アレスI」「アレスV」の二本立てとなっているロケット開発を、「アレスV」よりや や小振りな「アレスV lite」というロケットに一本化する。シャトル引退後のISSへの宇宙飛行士の輸送は、NASAではなく、例えば宇宙ベンチャーのスペースX社が開発中の「ドラゴン」宇宙船のような、民間の有人宇宙船に任せてしまう。浮いた資金は、ISSの延命に注ぎ込み、2020年まで使用する。

委員会報告では、この2つの行き方は、共に資金不足により計画の遅延を招くことになると結論付けている。2010会計年度のNASA予算は、約187億ドル(ドル90円換算で1兆6830億円)で、2014会計年度までこの規模を維持するという将来計画になっている。報告書は、これを2010〜2014年度で合計30億ドル程度増額しなければ、これらの計画は遅延し、予定通りの実施は不可能と結論した。年率にして2.4%の予算増加が必要ということになる。
2020年までに行うとしていた有人月着陸の実施は、2020年代の後半以降にずれ込むことになる。
これから後の検討オプションは、すべて予算を増やすことを前提としている。

この区分は、予算を増やした上で、ブッシュ政権が打ち出した有人月探査を優先的に実施するというものである。3種類の素案を検討している。
現行計画をそのままにして、年間予算を増額するというものである。オプション1の予算追加版といえる。
オプション4a:新アレス利用。
オプション2の予算追加版。ロケット開発を「アレスV lite」に一本化。ISSへの宇宙飛行士輸送を民間企業に任せ、浮いた資金でISSを2020年まで延命する。
オプション4b:シャトル延命。
スペースシャトルが引退すると、オリオン宇宙船の就航まで、アメリカの有人打ち上げ能力に空白が生じてしまう。そこでスペースシャトルを2015年まで延命する。ロケットは、アレスI/Vではなく「シャトル派生型打ち上げ機」と呼ばれるシャトルの部品を最大限に流用した貨物用ロケットを開発する。地球低軌道への有人打ち上げは、オプション2と同じく、民間の有人宇宙船に任せる。
委員会は、オプション3、4は共に2020年代半ばの有人月着陸が可能になるとした。ただし、オプション3の場合、オリオン/アレスIによる有人打ち上げは2017会計年度となり、シャトル引退以降のアメリカの有人打ち上げ能力の空白は6年にも及ぶ。

有人月探査の実施事態を大胆に見直すというプラン。一気に月を目指すのではなく、地球・太陽の形成するラグランジェ点、地球に近づく小惑星、火星の衛星であるフォボス・ダイモスなど様々な場所への有人探査を行っていき、最終的に有人月着陸に至る。 オプションは、オプション5aから5cまでの3種類があるが、すべてスペースシャトルを2011年に引退させ、地球低軌道への有人輸送を民間の有人宇宙船に任せる。ISSは2020年まで運用する。5a〜5cの違いは、有人探査のために開発するロケットの種類が違うだけ。
探査のために必要な大型貨物打ち上げロケットとして、アレスV liteを開発する。
オプション5b:使い捨てロケットを使用
大型貨物打ち上げロケットとして、現在使用している、「デルタ4」「アトラスV」ロケットの発展型を開発する。
オプション5c:シャトル派生型使用
大型貨物打ち上げロケットとして、シャトル派生型打ち上げ機を開発する。
フレキシブル・パスでは、シャトル引退時期、ISSの運用終了時期、民間有人宇宙船の活用などは、aからcまでの3つのオプションで共通しており、有人探査に使用するロケットの種類のみが異なる。
委員会は、フレキシブル・パスについて、「2020年代初頭に有人探査開始が可能」と評価した。2020年代に、まず月フライバイを含むラグランジェ点到達、地球に近づく小惑星の探査、有人火星フライバイなどのステップを年1回の割合で実施していき、2020年代半ばには火星の衛星の有人探査ないしは有人月着陸が可能になるという。
「2020年までに有人月着陸」ではなく、「2020年代から、ひとつひとつ、宇宙のより遠い場所への探査を進めていき、その結果として2020年代半ば以降に、有人月探査も実施できるようになる」というわけだ。