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大前研一の「産業突然死」時代の人生論ビジネス

大前研一:世界にとって大きなリスク、それはドルと円(1/5ページ)

2009.11.09

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 金融経済危機以降、戦後最長に及んでいたアメリカの景気後退が改善に転じた。米商務省の発表によると、2009年7-9月期のGDP(国内総生産)は前期比3.5%増(年率換算)となり、5四半期ぶりのプラス成長となった。ただ、今後の回復ペースは緩慢になるという見方も多い。日本や中国などアメリカへの輸出に頼っていた国は、今後も引き続き、輸出依存ではなく自国の内需拡大に取り組む必要があるだろう。

好調の住宅産業が米国経済を回復させている

 アメリカの経済が改善に転じたのは、ハウジング(住宅産業)分野における好調が大きな要因だ。アメリカの経済のうち70%が個人消費。そのうち35%ほどをハウジングが占めている。したがって、この分野が好調であれば経済に大きな影響を与えるのである。

 アメリカにおける実質GDP成長率の推移を項目別に確認してみよう。次のグラフだ。

 このグラフを見れば、「住宅」が急上昇していることがよくわかる。「政府支出」や「設備投資」に比べてその差は歴然である。「住宅」が好調なのはオバマ大統領の奨励策が大きい。金利を低く抑えて、住宅市場を刺激しているのである。今回、住宅需要を押し上げているのは信用に不安のあったサブプライム層ではなく、安い間に建て替えておこう、という中間所得層以上の人々である。

 一時はマイナス7~8%という予測さえあったGDPを3.5%増まで持ってきた手腕には一応の評価を与えたい。だが、この好調を手放しで喜ぶわけにはいかない。現在大きく成長しているのは、低金利などのインセンティブがあるからに過ぎず、本当の民間需要のおかげとは言えないからだ。その証拠には金利に敏感な住宅以外には外食、衣服、旅行などは軒並み低調である。クレジットカードの発行、使用なども依然として低迷している。優遇政策が終わったときにも成長が続くのかと言えば疑問が残る。

 GDPが増加した一方で、アメリカの失業率は依然として高い。9月は9.8%まで上昇していたが、10月にはついに10.2%と大台に乗ってしまった。その点に注目すれば、「景気後退からの脱却」とは言えないのではないか、と皆さんは思うかもしれない。だが、株式や景気と失業率は別問題として認識するべきだ。ジョブレスリカバリー(雇用なき景気回復)という言葉があるように、雇用は最後の最後まで改善しない遅行指数なのだ。景気が良くなって企業家心理が回復し、そして業務においても人材不足となり、「残業をしてもダメだ」という状況になってやっと雇用につながっていく。だから今回の景気回復が雇用に好影響を与えるのも、当分先の話になると見ておいた方がいいだろう。

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