原文タイトル:Three Myths About Business In China
原文掲載サイト:www.forbes.com
著者名:Shaun Rein
原文公開日時:2009年10月27日
誰もが知ることでも、もはや真実とはいえないことがある。
今年7〜9月期、中国の国内総生産(GDP)は8.9%成長した。この国は巨大な多国籍企業にとってさえ成長の鍵となりつつある。IntelのCEO(最高経営責任者)であるPaul Otellini氏は最近、「中国はありがたい存在だ。間違いなく我が社を深みから引き上げてくれた」と語った。ファストフードのコングロマリットであるYum! Brandsは売上高の3分の1を中国で叩き出す。GapやTiffanyなどのブランドも中国での拡張計画を発表した。今まで以上に重要度を増している中国でビジネスを行う場合に引っ掛かってはならない3つの神話を紹介しよう。
神話その1:中国経済は輸出主導型である。
『The Coming Collapse of China』の著者であり本誌コラムニストでもあるGordon Chang氏などアナリストの予想よりもずっと立派に、中国は今回の金融危機を耐え抜いた。それが可能となった主な理由のひとつは、同国の輸出セクターの経済全体に占める割合がアナリストらの信じている約40%という数字よりもはるかに小さいことにある。中国が2001年に世界貿易機関(WTO)に加盟してからしばらくは、確かにそのくらいの割合を占めていた。経済発展を目指す政府は、事実上、提案されたプロジェクトのすべてに躊躇なくゴーサインを出した。そのようにして急速に拡大した生産能力だが、国内消費者向け製品の生産には使用されなかった。中国の消費者は依然として貧しすぎたのである。そのため企業が設置したのは、輸出品を生産する工場だけであった。
(中国の大富豪)
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金融危機前ですら、そういった状況はすでに劇的に変化していた。弊社China Market Research Groupは、2008年までに中国経済に占める輸出セクターの割合はわずか20%になっていたと推定する。コスト上昇に加えて新たな経済政策が採用されたことで、同セクターの割合は減少した。
ひとつには中国政府は、汚染度が高く、エネルギー集約的で、低水準の知的資本型プロジェクトを認可しないようになった。公害が時代遅れの国営医療制度にとって極めて重い負担となり始めた。そして政府は外国のエネルギー資源への依存度を低減するため、サービス業主導で輸出への依存度の低い経済を目指したのである。多くの工場が、ベトナム、スリランカ、メキシコなど、企業に有利な政策が採られ、労働コストや不動産コストが中国に比べて低い国々に移転した。閉鎖された工場も多い。そしてApple社のiPhoneを製造するFoxconnなど、より大きな規模のメーカーは市場シェアを固めることになった。
過去数カ月間の中国のエネルギー使用量がGDP成長率ほど拡大していない理由は、ごく小規模で煤煙だらけの工場から、より大規模な工場にシフトした事実で一部説明できる。中国経済はエネルギー非効率な工場に以前ほど依存しなくなっているのだ。
私が著書『Tap Into China's Swelling Consumer Base』で述べたように、国内消費が拡大するなかで、輸出セクターの役割は小さくなり続けている。弊社予想では、今後5年間に個人消費主導の内需がGDPに占める割合は、現在の33%から50%に拡大する見込みだ。
神話その2:中国は安い労働力を無限に供給する。
確かに、中国が安い労働力の供給元であると考える人はいる。だが金融危機のさなかでさえ、企業が才能ある人材を採用し、社内に留め置くことには困難が伴った。広東省のような製造業の中心地では、低い労賃で、しかも1年に1回しか家族にも会えないような状態で働こうというブルーカラー労働者はもはやほとんどいない。こうした労働者はもう飢えを恐れることもなく、仕事を選ぶようになった。故郷の近くでも就職のチャンスは以前よりはるかに多い。中国政府による5860億ドル規模の景気刺激策が、多くの建設労働者や工場労働者の出身地である貧しい地方の経済を下支えしたからである。
ホワイトカラー労働者については、多国籍企業の多くが人材戦略の再考を迫られている。転職率は高く、大部分の企業では1年間に20%の社員を失う。若いホワイトカラーが仕事を辞める理由として圧倒的に多いのは、賃金が低すぎるからではなく、昇進する道筋が見えないからだ。
中国本土出身の上級幹部が1人もいない地位で外国人社員が法外な賃金パッケージを受け取っているという事実がいちばん、若い労働者のやる気をなくすものだ。台湾や香港の出身の幹部、ほかにも中国語を話せる幹部はいるかもしれない。だが彼らは中国人のうちには入らない。中国本土の人々にとって、彼らはいまだに外国人なのだ。Baiduのような中国の競合他社に就職できるのに、なぜGoogleで働くのか、そしてなぜ「ガラスの天井」がないように感じるのか、疑問に思っている中国人は多い。
企業は、彼ら若い中国人を社内に引き止めることに熱心であるという姿勢を明確にせねばならない。トレーニングプログラムや海外転勤の機会を設け、はっきりした昇進の道筋を示す必要もある。さらには、外国人と同じ賃金を受け取る中国出身のリーダーを置く必要もあるだろう。極めて優秀な中国人社員には外国人を上回る賃金を支払わねばならない。そのような社員は極めて稀で、引きとどめておくのが困難だからだ。
神話その3:コネがすべてだ。
ビジネスパートナーあるいは社員になる可能性のある人が、開口一番、「私は良いコネを持っています」と言い、それがその人の手札なのだとしたら、ウサイン・ボルトのごとくその場から立ち去ろう。良いコネを持つとされる人物の子供を雇い、そうしたコネによって成功が保証されると思い込んでいる企業はあまりにも多い。
確かに自分の知り合いが誰かということは、他の国と同様に中国でも重要である。だが中国経済は以前よりずっと洗練されつつある。各種の規制は5年前に比べるとより透明性が増し、多くの場合、認可を得るのに内部のコネはもはや必要ない。適当な人物を知っていれば富が保証されたのは遠い昔のことだ。ほとんどのビジネスでは、マーケティング・ミックスの4つのP[price(価格)・placement(販路)・product(製品)・promotion(販売促進)]が優勢になりつつある。カリフォルニア州の小さな町の助役の息子や娘だというだけで雇い入れて、ある程度の成功が見込めると考える人が果たしているだろうか。そうは思えない。中国では違うとどうして言えるだろうか。
派閥争いが勃発して、コネを持つパートナーが敗者側についていた場合、そのコネがかえってビジネスに害を及ぼすこともありうる。勝者側は敗者と密接な関係のあった人々から仕事を奪うかもしれない。私はこれまで、ある政府当局者が権力を失ったり、別の県や省に配置替えになったりしたために、その人の持つたったひとつの大きなコネを頼みにしていた企業がすべてを失うというケースを幾つも見てきた。政府当局者との関係を築くことはもちろん必要だが、ビジネス全体の基礎を彼らの上に置いてはいけない。
中国は相対的に見て無傷で景気後退から脱出しつつあり、今後は低コスト製造業の拠点として頼れる存在ではなくなるかもしれない。それを企業は理解する必要がある。労働者も政府も、変化を強く求めている。中国に関する時代遅れの通念から早く抜け出せば、それだけ早く中国で利益を上げられるようになるだろう。
Shaun Rein氏はマーケティング戦略情報会社China Market Research Groupの設立者、代表取締役。本誌でリーダーシップ、マーケティング、中国に関する記事を執筆している。同氏の記事を読みたい方はこちら。
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