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時評コラム

大前研一の「産業突然死」時代の人生論

日本がアルゼンチンになる日の予感がする

2009年11月4日

 小泉政権の目玉だった郵政民営化の流れを、民主党政権は“逆向き”に大きく舵を切った。政府は10月20日、郵政民営化見直しをするための「郵政改革の基本方針」を閣議決定した。これは、郵便事業にとどまらず、貯金や簡易保険など金融サービスも全国一律の提供を義務付けるほか、郵便局ネットワークを地域の行政サービス拠点として活用することが盛り込まれたものとなっている。

 さらに日本郵政の社長だった西川善文氏を辞任に追い込み、代わりに起用したのが、こともあろうに元官僚の斎藤次郎・元大蔵事務次官(73歳)である。

 こうした動きを見て、民主党は「何を考えているのか」と問い詰めたくなるのはわたしだけではないだろう。

「天下りではない」と否定する民主党、14年経ったらよいのか?

 斎藤氏を日本郵政の社長に据えたのは小沢人事であろう。斎藤氏は小沢幹事長とは「刎頸の交わり」というべき親しい仲である。二人はこれまでに水面下でいろいろ意見交換をしてきたのだろう。突然登場したにもかかわらず、記者会見で、斎藤氏は郵政問題についていろいろ考えを述べていたのがその証拠だ。

 官僚出身(だから「悪い」というわけではないが)の斎藤氏が日本郵政の社長に就いたことに国民が納得したかどうかは、本人の適性とは別の問題として考えなくてはいけない。何しろ民主党は、自民党政権時代に官僚の天下りを大々的に批判してきたのだから。

 2008年に日銀総裁を選ぶときのやりとりを記憶している読者も少なくないだろう。あのとき官僚出身(元財務事務次官)の武藤敏郎氏を打ち出した自民党に食ってかかり、最後まで認めなかったのは民主党ではないか。衆議院では武藤氏が認められたが、参議院では民主党の反対多数で否決され、ねじれ国会の弊害が話題になったものだ。結局、副総裁として認められていた白川方明氏が総裁に就任することになったわけである。

 ところがその民主党が今回、郵政のトップとして官僚出身の斎藤氏を連れてきた。それどころか、経営陣や取締役にもこれでもか、というくらいの官僚出身者を任命している。当然野党になった自民党は仕返しとばかりに「これは天下りではないか。あなた方がさんざん批判していた天下り、根絶すると断言してきた天下りを、自ら行うのはおかしくはないか」と問い詰めた。自民党がこんな批判をすること自体が「語るに落ちる」という気もするが、指摘そのものは妥当だろう。

 それに対して民主党は「官僚を辞めて14年も経過している人だから、天下りには当たらない」と、“斬新”な言い訳をした。皮肉を込めていうなら、民主党は「官僚を辞めてから14年以上経過したものは、天下りには含まれない」という新しい定義をしたのだ。

 これで、今後14年過ぎた場合は、天下晴れて堂々と天下りができる時代が到来したことになる。国民の大きな批判にさらされながら天下りを続けてきた官僚にとって、この新しい定義はさぞかし素晴らしい福音として響いたことだろう。

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