(松浦晋也=ノンフィクション・ライター)
10月20日、アメリカの次期有人宇宙船「オリオン」を打ち上げるロケット「アレスI」の試験1号機「アレスI-X(Ares I-X)」がケネディ宇宙センターの機体組立棟を出て、射点に移動した。打ち上げは米東部時間10月27日午前8時(日本時間27日午後9時)を予定している。

以前から、機体デザインは公表されていたものの、その異形の姿はアメリカのメディアでも波紋を呼んでいる。アレス Iは全長が98.2mであるにも関わらず、全体を支える第1段の直径は3.77mしかない。極端に細長いのだ。しかも第2段の直径が5.5mもあり、第1段より太くなっている。このような設計は射点上においても打ち上げ時の上昇中においても安定が悪く、横風の影響を受けやすくなるという欠点を持つ。
アレスIが、異形のデザインとなった背景には、「スペースシャトルの部品を極力流用して、シャトル関連産業を保護する」という、公共事業的な狙いがあった。しかし、結果としてロケットとしては無理な設計となり、無理は設計変更と開発途中のトラブルを呼び込んだ。設計変更により「シャトル関連部品の流用」は事実上消えてしまい、トラブルは開発遅延を招いた。
折しも、10月22日、オバマ政権における宇宙政策見直しを審議していた米有人宇宙飛行計画審査委員会(Review of U.S. Human Spaceflight Plans Committee:通称オーガスチン委員会)は、有人月探査計画の大幅な見直しを迫る報告書を公表した。2004年1月にブッシュ前大統領が打ち出した有人月探査計画は、技術的にも政治的にも大きな曲がり角を迎えつつある。