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勤労世帯に広がる貧困の実態(1/8ページ)

2009.10.23

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(後藤道夫=都留文科大学教授)

失業者の5人に1人しか保障を受け取っていない

 現在の貧困問題を語る上で第一に指摘しなければならないのは、もともと日本の社会保障や最低生活保障が勤労世帯向けにはほとんどゼロに等しいことがあげられる。例えば、およそ十分ではないが、非勤労世帯向けには老齢年金、障害者年金があり、母子世帯については児童扶養手当があるが、働く能力を持っている世帯については、ほとんど何もない。

 注意を払わねばならないのは、現状では、失業時の保障が失業者の5人に1人しか与えられていない事実だ。こうなってしまったのは、ごく最近の出来事だ。1960年代半ばだとほぼ100%の失業者がもらえていたし、70年代の半ばくらいくらいまでは80%程度がもらえていた。だが、「失業保険」から「雇用保険」に制度が切り替えられ、失業時の生活保障という従来の目的から失業者のスムーズな労働移動という方向に制度の重点が移った。そして、臨調行革のころに一段階、それから今度の構造改革で一段階というふうに制度が次々と変わっていった。

 現在の雇用保険は非正規の労働者の増加に対応できていない。さらに、低処遇の正社員の増加にも対応できていない。もともとの補償額が低いうえに、給付期間がどんどん短くなってきているからだ。それに引き換え、失業期間は長期化している。

 また、元来からそうだったのだが、自営業もしくは家族従業者が失業した場合の保障が何もない。90年代の半ばくらいまでは、失業しても転職先が確保できていた。現在はどこかに雇ってもらおうというような転職の仕方が困難になっており、失業者がすぐに生活に困る状態になっている。

 その結果、生活を保障されない失業者が大変な数にのぼり始めた。もともと失業者を十分に保障できない制度構造を持っていたが、そのもとで失業者の数がすごい勢いで膨らんだのが過去10年間だ。雇用保険によって保障されない失業者は1970年代の10数万人から2000年代は200万人に増加した。ここで、貧困層を生み出す一つの大きな原因ができあがった。

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