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その陰に世界規模での「売る努力」あり

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社会全体が「事件」として捉えてくれた
その陰に世界規模での「売る努力」あり(3/3ページ)

EMIミュージック 「ザ・ビートルズのリマスター盤」(2)

2009.10.16

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「売る努力」があればこそビートルズの楽曲は永遠を保っている

――「CDが売れない」といわれて久しい昨今です。今回のリマスター盤の発売は、ビートルズほどの音楽家であっても常に付加価値をつけてプロモーションしていかなくてはビジネス的には厳しくなる、ということなのでしょうか。

 大島 うーん。付加価値をつけた、という側面はあるでしょうね。いかにビートルズとはいえ時代の趨勢にしっかりミートさせていく作業は不可欠で、そのための作業と成果を「付加価値」と呼ぶことはできるでしょう。我々の業界で「付加価値」というと、特製ステッカーを同梱したとか、あるいはフィギュアを付属させたといったことが連想されてしまうのですが、今回のリマスター盤は明らかにそういう小手先のものとはレベルが違います。

 最初の付加価値は、それこそ1987年の初CD化です。時代がアナログからデジタルに移り、それにしっかり対応した。90年以降、ベスト盤やリハーサルテイク集の発売、ジョン・レノンの遺作にメンバー3人が手を加えた「新曲」の発表などをした。これらもやっぱり時代に合わせていくという意味での「付加価値」なんですね。だからこそ、それぞれ大きな話題にもなったし、ビッグセールスも記録したんです。

――ところで来年2010年はビートルズ解散からちょうど40周年です。ということは、リマスターの発売を3~4カ月遅らせさえすれば、より効果的なプロモーションができたのではありませんか。

 大島 それはですね、全然考えてなかったです(笑)。正確にいえば「考える必要はなかった」ということでしょうか。実はこの9月にビートルズの、というよりロック史上の名盤中の名盤である『ABBEY ROAD』発売40周年を迎えたのですが、私はリマスター盤のマーケティング作業に追われて直前まで忘れていたくらいです。何しろビートルズですからね、そんなメモリアルイヤーみたいなものに拘泥する必要性は少ない。

 そうはいっても来年になれば、それこそ「解散40周年」ということで何がしかのプロモーションは仕掛けるとは思いますけどね。というのは、若年層ファンの掘り起こしを大変に重要な課題として捉えているからです。むろん、「アラフォー」と呼ばれる世代以上の方にとってビートルズは定番的な存在でしょう。しかし10~20代の若い人はせいぜい『YESTERDAY』『LET IT BE』くらいしかご存知ないだろう、と我々は認識しています。

 もちろん今回のリマスター盤の発売とそれに伴うプロモーションで、若い人たちにも「ビートルズという偉大な存在がある」「その存在に大きなリノベーションが起きている」程度のことは伝えられたと思う。今後はそういう若年層に対して、いかに「購買」という具体的なアクションを起こさせるかが我々の大切なテーマです。それを実現するためには、時にはあえて「40周年」というメモリアル性をフックにしたプロモーションも必要になるかもしれません。

 先に「350万枚も視野に入れている」と申しました。これを実現するためには既存のファンに買い替えをお願いするだけでは駄目で、やはり新規の若いファンを獲得していく必要がある。ビートルズはまぎれもなく永遠のコンテンツであり、それは楽曲の魅力が大きく貢献していることは疑いもない事実です。しかしその陰にはやはり、全世界規模での売る努力、若いファンを開拓していく戦略が連綿として存在してきたのです。

諏訪 弘(すわ・ひろし)
諏訪 弘(すわ・ひろし)

 1970年生まれ。広島県出身。大学卒業後、新聞記者・雑誌記者などを経て、2004年にフリーランスのライター・エディター、カメラマンとして独立。2007年に(株)アトリエ・シップを設立、代表取締役社長に就任した(会社設立のドタバタはこちら)。PCやビジネス関連記事の執筆などを中心に活動している。

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